役員(取締役や監査役など)の再任と重任の違い

会社の取締役や監査役、代表取締役などを新たに選任し、その者が就任を承諾すると、役員変更の登記が必要なことは以前述べました。

取締役や監査役の変更登記についてはこちら
代表取締役の変更登記についてはこちら

その場合、登記上「就任」と記載されます。

任期などの理由から役員を選びなおす場合に、選任前後で役員が同じ者だったときは、「就任」と記載するときと、「重任」と記載するときがあります。

今回は、この違いについて説明します。

再任とは

「再任」とは、一般的に、再び前の職務に任ぜられ、また、任ずることとされています。

また、会社法で「再任」という言葉がでてくるのは、会計監査人に関する規定になります。

(会計監査人の任期)
第338条
1 会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 会計監査人は、前項の定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。

会社法の会計監査人に関する規定からも、再任とは、選任前と選任後が同じ者であることと解釈できます。

しかし、登記上、「再任」と記載されることはなく、「重任」または「就任」とされます。
では、再任と重任の違いはなんでしょうか?

重任とは(再任との違い)

「重任」とは、取締役などが、任期満了による退任と同時に就任し、その間に時間的間隔が無い場合をいいます。

任期は、法令や定款で定められています。
取締役や監査役などの任期についてはこちら

取締役の一般的な例で説明すると、

取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされています。
その定時株主総会の終結と同時に任期が満了する取締役が、その定時株主総会で再選されて、直ちに就任承諾したときが、「重任」となります。

上記と同じような場合でも、就任承諾が直ちになされず、定時株主総会の翌日になった場合は、「重任」とはならず、定時株主総会の終結の時(登記上は日までしか記載されません)が「退任」となり、就任承諾が得られた定時株主総会の翌日が「就任」となる。

また、例えば定時株主総会の終結と同時に辞任する取締役が、その定時株主総会で再び選任され、直ちに就任承諾をしたとしても、重任とはならずに、「辞任」と「就任」になります。

代表取締役の重任

取締役会を設置している株式会社の代表取締役は、すべての取締役で組織された取締役会(会362条1項)で決定します。そして、代表取締役は、取締役の中から選定することとされています(会362条3項)。

代表取締役は取締役の地位を前提としているので、代表取締役に就いている取締役が、定時株主総会の終結の時に任期が満了すると、同時に代表取締役の地位を一旦退任することになります。

定時株主総会を閉会した後、同じ日の取締役会で、選定前の代表取締役と同じ者を代表取締役に選び、その者が直ちに就任承諾したとしても、理論上、時間的に間隔が空くことになるので、重任となることはありません。

しかし、便宜上、取締役の資格を喪失したことによる退任と代表取締役の就任の日が同一であれば、多少の時間的間隔があったとしても、「重任」として登記されます。

最後に

取締役などの役員の重任と再任の違いについて説明しました。
ご自身で登記するのは難しいなどお困りごとがあれば、お気軽に当事務所までご相談ください。