就業規則の閲覧義務と従業員の権利|企業が知っておくべき対応

就業規則は、従業員が働く上でのルールを定めたものです。企業は従業員がいつでも就業規則を閲覧できるようにしなければなりません。就業規則の周知は、労使間の信頼関係を構築させる一面もあります。本記事では、就業規則の閲覧に関する企業の義務と従業員の権利、具体的な対応方法について解説します。

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就業規則の閲覧は従業員の権利

労働基準法における周知義務

労働基準法第106条は、企業に対して、就業規則を従業員に周知する義務を明確に定めています。この周知義務は、単に就業規則を作成するだけでなく、その内容を従業員が閲覧し、内容を理解できる状態にすることを表しています。周知義務を怠った場合、企業は労働基準法違反として罰則を受ける可能性があります。

しかし、それ以上に重要なのは、周知義務の履行が、労使間の信頼関係を構築し、健全な職場環境を維持する効果があるという点です。従業員が就業規則の内容を知らない場合、企業の方針やルールに対する不信感が生じ、知らず知らずのうちにモチベーションの低下や労使紛争の原因となる可能性があります。

また、就業規則の周知義務は、労働時間、賃金、休日などの重要な労働条件に関する情報が、すべての従業員に平等に共有されることを保証する役割も果たします。これにより、不当な差別や不公平感をなくし、公正な労働環境を実現することができます。

具体的な閲覧方法

労働基準法が定める就業規則の周知義務を果たすためには、従業員が容易に就業規則の内容を閲覧できる環境を整備しなければなりません。具体的な方法としては、以下の3つの方法になります(労基法106条、労基法施行規則52条の2)。

  1. 時各作業場の見やすい場所へ掲示、又は備え付け
  2. 就業規則を労働者に交付
  3. パソコンやネットワーク上に保存してある就業規則を従業員が常時確認できる状態にする

企業は、従業員の状況や事業所の環境に合わせて、最適な方法を選択しましょう。

周知義務違反のリスク

就業規則の周知義務を怠ることは、企業にとって様々なリスクをもたらします。まず、労働基準法第120条第1項に基づき、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

さらに、就業規則の周知義務を怠ることは、金銭的なリスクだけでなく、従業員との信頼関係にも影響を与えます。懲戒処分に関する規定が周知されていない場合、従業員から不当解雇であると主張される可能性があります。

従業員から閲覧を求められた場合の対応

在職中の従業員への対応

在職中の従業員から就業規則の閲覧を求められた場合、企業は原則として、これに応じる必要があります。これは、労働基準法に周知義務の規定があるからです。閲覧を拒否することは、労働基準法違反となる可能性があります。

また、従業員からの信頼を損ない、労使間の関係を悪化させる原因ともなり得ます。企業は、従業員が就業規則を閲覧しやすい環境を整備し、求められた際には対応するようにしましょう。

退職した従業員への対応

退職した従業員から就業規則の閲覧を求められた場合、企業は必ずしもこれに応じる義務はありません。労働基準法上の周知義務は、あくまで在職中の従業員を対象としています。

しかし、退職理由や退職後の手続きに関連する場合など、状況によっては、退職した従業員の閲覧請求に対応する方が良いこともあります。

例えば、退職金や未払い賃金に関するトラブルが発生している場合、就業規則の関連規定を提示することで、問題解決につながる可能性があります。企業は、退職した従業員からの閲覧請求に対して、個別の状況を考慮し、柔軟に対応するようにしましょう。

まとめ|就業規則の適切な管理と周知で働きやすい環境を

就業規則は、企業の秩序を維持し、従業員の労働条件を明確にするための重要なルールブックです。企業は、就業規則を作成するだけでなく、従業員がいつでも閲覧できるように、適切な管理と周知を行わなければなりません。

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