就業規則の閲覧義務と従業員の権利|企業が知っておくべき対応

就業規則は、労働時間や賃金、休暇、退職など、会社で働くうえでのルールを定めたものです。会社は、就業規則を作成して保管するだけでなく、従業員がその内容を確認できる状態にしておく必要があります。

一方で、「就業規則を見たいと言われたら、どのように対応すればよいのか」「電子データで保管していれば問題ないのか」「退職した従業員から閲覧を求められた場合はどうすればよいのか」と迷うこともあるのではないでしょうか。

この記事では、就業規則の周知義務と具体的な閲覧方法、従業員から閲覧を求められた場合の対応、会社が確認しておきたい注意点を解説します。

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就業規則の周知は会社の義務

労働基準法第106条に定められた周知義務

労働基準法第106条では、使用者に対し、就業規則などを労働者に周知することを義務付けています。

就業規則は、会社が作成して保管しておけばよいというものではありません。従業員が必要なときに内容を確認できるようにしておく必要があります。

従業員が確認したいタイミングは、次の場面が想定されます。

  • 自分の休日や休暇の取扱いを確認したい
  • 遅刻や欠勤をした場合の取扱いを知りたい
  • 休職や復職の条件を確認したい
  • 退職や定年に関する規定を確認したい
  • 懲戒処分について、どのような規定があるのか知りたい

会社が就業規則を周知していなければ、従業員が自分の労働条件や社内ルールを確認できず、認識の違いが生じる原因にもなります。

また、就業規則が労働契約の内容となるかどうかを判断するうえでも、労働者への周知は重要です。就業規則を作成・届出したことだけで、規定の効力がすべて認められるわけではありません。

就業規則を周知する具体的な方法

労働基準法施行規則第52条の2では、就業規則などの周知方法として、主に次の方法が定められています。

  • 常時各作業場の見やすい場所に掲示する、または備え付ける
  • 書面を労働者に交付する
  • 電子データとして保存し、各作業場の労働者が内容を常時確認できる状態にする

このように、紙の就業規則を事務所に備え付ける方法や、従業員が利用できる社内システムに電子データを保存する方法などが考えられます。会社の規模や働き方に合わせて、適切な方法を選びましょう。

従業員から就業規則の閲覧を求められたら?

在職中の従業員から求められた場合

在職中の従業員から就業規則を見たいと申し出があった場合、会社は、従業員が内容を確認できるように対応する必要があります。

そもそも会社には、従業員が就業規則を確認できる状態にしておく義務があります。そのため、閲覧を求められたときだけ個別に対応すればよいという考え方ではなく、普段から確認できる環境を整えておくことが重要です。

従業員から閲覧を求められた際に、理由を問わず拒否したり、閲覧を難しくするような運用をしたりすることは避けましょう。

なお、周知義務があるからといって、あらゆる場合に希望する形式での交付まで当然に義務付けられるわけではありません。まずは法令に沿って周知できているかを確認し、交付の申出にも適切に対応することが大切です。

退職した従業員から求められた場合

退職した従業員から就業規則の閲覧や写しの交付を求められた場合は、在職中の従業員への対応と区別して考える必要があります。

労働基準法第106条の周知義務は、事業場で働く労働者への周知を定めたものです。退職後の元従業員について、在職中と同じ周知義務がそのまま継続するとは限りません。

ただし、だからといって、退職者からの申出を一律に拒否すればよいというわけでもありません。

  • 退職金の支給条件を確認したい
  • 未払い賃金や残業代について確認したい
  • 休職期間や退職の取扱いについて確認したい
  • 退職時点で適用されていた規定を確認したい

このような場合には、当時の労働条件や就業規則の内容が問題となることがあります。

会社としては、申出の内容や目的を確認し、関連する規定の提示や写しの交付に対応するかを検討するとよいでしょう。すでに労使間で紛争が生じている場合などは、個別の事情に応じて慎重に判断する必要があります。

就業規則を周知していない場合のリスク

労働基準法違反となる可能性がある

就業規則の周知義務を果たしていない場合、労働基準法第106条に違反する可能性があります。同法第120条では、第106条違反について30万円以下の罰金が定められています。
実際にどのような責任が生じるかは、具体的な事実関係や適用される法令によって判断されます。

会社としては、罰則の有無だけを問題にするのではなく、従業員が必要な情報を確認できる環境になっているかを日頃から点検することが重要です。

就業規則の規定が労働契約上の効力を持つかという問題

就業規則は、作成・届出をすれば、すべての規定が当然に労働契約の内容となるわけではありません。

労働契約法第7条では、合理的な労働条件を定めた就業規則が労働者に周知されている場合などに、就業規則で定める労働条件が労働契約の内容となることについて規定しています。
就業規則の周知が不十分な場合には、規定の効力が問題となることがあります。

特に、懲戒処分や退職、休職など、従業員の立場に大きく影響する規定については、内容が適切かという点だけでなく、周知や実際の運用も確認しておきましょう。

懲戒規定については、こちらの記事をご覧ください。
→ 就業規則における懲戒処分の基本と運用ポイント

休職制度については、こちらの記事をご覧ください。
→ 就業規則における私傷病による休職規定|制度設計と運用のポイント

就業規則の周知状況を確認するチェックポイント

就業規則を適切に周知できているか、次の点を確認してみてください。

  • 従業員が就業規則の保管場所を知っている
  • 必要なときに就業規則を閲覧できる
  • 電子データの場合、アクセス方法が従業員に案内されている
  • パートタイマーなど、対象となる従業員も確認できる
  • 就業規則を変更した際、変更後の内容を確認できるようにしている
  • 古い規則や変更前のデータが、現行規則と混同されないよう管理している

すべての項目を確認することにより、現在の運用に問題がないかを点検するきっかけになります。

まとめ|就業規則は作成だけでなく、周知と管理が重要

就業規則は、会社と従業員が働くうえでの共通のルールです。会社には、就業規則を作成することだけでなく、従業員がその内容を確認できるように周知することも求められます。

特に、電子データで保管している場合は、保存しているだけでなく、従業員が実際にアクセスできるかを確認しましょう。

就業規則を長年見直していない場合には、法令改正への対応や、実際の働き方とのずれが生じていないかも確認する必要があります。

詳しくは、就業規則の作成・見直しサービスをご覧ください。
→ 就業規則の作成・見直しについてはこちら