取締役会議事録ガイド‐決議要件から書面決議(みなし決議)まで
取締役会は会社の業務執行の決定を行う重要な意思決定機関です。取締役会の書面決議(みなし決議)は、迅速な意思決定を可能にする便利な手段となります。しかし、要件や手続きを誤ると、決議が無効になるリスクもあります。この記事では、取締役会の職務、決議要件、議事録の記載事項から書面決議までを解説します。
投稿者プロフィール

\ 初回は相談無料ですので、お気軽にご連絡ください /
目次
取締役会議事録と開催
議事録の定義と法的根拠
取締役会は、業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定及び解職の職務を行います(会362条)。
代表取締役と業務を執行する取締役は、3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません(会363条)。
取締役会議事録は、取締役会の決定事項や報告事項を記録した文書で、会社法で、取締役会を設置している株式会社において、議事録を作成し、一定期間保存することが義務付けられています。
取締役会開催の流れ
取締役会は、原則、各取締役が招集することとなっていますが、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集することになります(会366条1項)。ただし、この場合でも、取締役会を招集する取締役(以下、「招集権者」という。)以外の取締役は、招集権者に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができるとされています(会366条2項)。
召集権者は、取締役会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役及び各監査役に取締役会開催の通知を発しなければなりません(会368条)。この招集通知の方法は、会社法上の規定はありません。口頭や電話、メールでの通知も可能ですが、通知をした日付の記録を残すようにしましょう。
取締役及び監査役の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができます。
取締役会の決議要件は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)となります(会369条)。
ただし、取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができません。
取締役会の書面決議(みなし決議)とは?
取締役会の書面決議(みなし決議)とは、取締役会を開催せずに書面または電磁的方法によって決議や報告を行う方法です。時間や場所の制約を受けずに迅速な意思決定が可能なため、効率的な経営に繋がります。
書面決議とオンライン会議での取締役会との違い
通常の取締役会は、取締役が一堂に会して決議や報告を行います。オンライン会議での取締役会も、通常の取締役会の一例となり、書面決議とは異なります。オンライン会議を開催するときは、通常の取締役会の開催と同様に招集通知などの手続きが必要になります。
書面決議とは、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなすものです(会370条)。ただし、この取締役会の書面決議は、株主総会の書面決議と違い、定款の定めが必要です。
報告については、特に規定はないため、定款の定めがなくても書面での報告は可能です。
しかし、代表取締役や業務を執行する取締役による、三箇月に一回以上の、職務の執行状況の取締役会への報告については、書面による報告の省略をすることができないので注意が必要です(会372条2項、363条2項)。
書面決議の要件
すべての取締役が書面決議の提案に同意していること、および、監査役が異議を述べていないことが要件です。また、定款に書面決議(みなし決議)に関する定めがある必要があります。 書面決議は、あくまでも取締役全員の同意を前提とした手続きです。一部の取締役が反対している場合は、書面決議を行うことはできません。また、監査役設置会社においては、監査役が書面決議の内容について異議を述べた場合も、書面決議は認められません。
取締役すべての同意が要件となっているので、書面決議があったものとみなされる日は、最後の取締役から会社に同意の意思表示がなされた日となります。
議事録の作成と保管
取締役会議事録の記載事項
通常の取締役会の場合も書面決議による場合も、議事録を作成する必要があります。
取締役会議事録の作成者については、法令に規定はありませんが、会社の定款や規則に定めがあれば、それに従うことになりますので、確認が必要です。
取締役会議事録は、書面又は電磁的記録のどちらでも作成しても構いませんが、記載しなければならに事項は、会社法施行規則101条と会社法369条3項定められています。主なものとしては、以下の事項です。
通常の取締役会の場合
1 取締役会が開催された日時及び場所
2 オンライン会議等を利用して出席した取締役や監査役等がいるときは、当該取締役等の出席の方法
3 取締役会の議事の経過の要領及びその結果
4 決議を要する事項について特別の利害関係を有する取締役があるときは、当該取締役の氏名
5 取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主の氏名又は名称
6 取締役会の議長が存するときは、議長の氏名
7 出席した取締役及び監査役の署名又は記名押印(会369条3項)
1.は、一般的には、開催の時間だけでなく、閉会の時間も記載します。
書面決議の場合
1 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
2 上記1の事項の提案をした取締役の氏名
3 取締役会の決議があったものとみなされた日
4 取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
5 取締役会への報告を要しないものとされた日
6 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
備え置き期間
取締役会設置会社は、取締役会の日または書面決議があった日から10年間、取締役会議事録又は同意の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録をその本店に備え置かなければなりません(会371条)。株主総会議事録は、支店でも備え置きが義務付けられていましたが、取締役会議事録は、支店での備え置きは不要です。
まとめ
取締役会議事録の作成は、法令上義務付けられてます。
書面決議は、迅速な意思決定を可能にする有効な手段です。書面決議に係る取締役会議事録は登記申請に使用することもできますが、登記申請で求められる印鑑が書面に押印されている必要があります。
当事務所は、取締役会議事録作成を含む会社の相談をお受けしています。お気軽にご連絡ください。