特例有限会社とは?株式会社との違い・役員変更・株式譲渡・移行を解説
「有限会社」という名前の会社を見かけることがあります。
現在は有限会社を新しく設立することはできませんが、会社法が施行された2006年5月1日時点で存在していた有限会社は、現在も「特例有限会社」として存続しています。
特例有限会社は株式会社の一種として扱われますが、一般的な株式会社とは異なるルールもあります。
例えば、役員の任期や決算公告、株式の譲渡、機関設計などに違いがあります。
この記事では、特例有限会社の基本的な仕組みから、株式会社との主な違い、役員変更や株式譲渡の注意点、株式会社へ移行する場合の手続きまで整理します。
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特例有限会社とは?
現在、有限会社を新しく設立することはできません。
2006年5月1日に会社法が施行された際、それまでの有限会社制度は廃止されました。
ただし、それまでに設立されていた有限会社については、すぐに消滅するのではなく、一定の経過措置によって「特例有限会社」として存続することが認められました。
そのため、現在も「有限会社」という商号の会社が存在しています。
特例有限会社は、会社法上は株式会社として扱われますが、通常の株式会社とは異なる特則が設けられています。
特例有限会社と株式会社の主な違い
特例有限会社には、主に次のような特徴があります。
- 役員の任期に法定の期限がない
- 決算公告の義務がない
- 取締役会を設置できない
- 株式譲渡について特例がある
- 一定の組織再編を行うことができない
- 株式会社へ移行することができる
それぞれ詳しく見ていきます。
特例有限会社には役員の任期がない
株式会社では、取締役や監査役に任期が定められています。
株式会社の取締役や監査役の任期ついてはこちら
株式会社の代表取締役の選任・退任の考え方についてはこちら
一方、特例有限会社の取締役・監査役には、法律上の任期の定めがありません。
そのため、任期満了による役員変更登記をする必要がないことが、特例有限会社の大きな特徴の一つです。
ただし、定款で役員の任期を定めている場合は別です。
定款で任期を定めている場合には、その定めに従って役員の退任や変更登記が必要になることがあります。
また、任期がないからといって、役員変更登記そのものが必要ないわけではありません。
例えば、
- 取締役が辞任した
- 取締役が死亡した
- 新たに取締役を選任した
- 代表者が変更になった
といった場合には、変更登記が必要になることがあります。
特例有限会社の役員変更については、実際の役員構成や定款を確認したうえで判断することが大切です。
特例有限会社は決算公告の義務がない
株式会社には、原則として定時株主総会の終結後、計算書類を公告する義務があります。
一方、特例有限会社については、旧有限会社制度からの経過措置により、決算公告の義務がありません。
そのため、通常の株式会社と同じように決算公告を行う必要はありません。
ただし、決算公告の義務がないことと、会社として決算書類を作成・保存することは別の問題です。
会社の会計や税務について必要な手続きは、別途確認する必要があります。
特例有限会社は取締役会を設置できない
特例有限会社では、株式会社のように取締役会を設置することはできません。
そのため、取締役会設置会社を前提とした機関設計をすることはできません。
特例有限会社の機関設計を考える際には、現在の定款や役員構成を確認しながら、自社にどのような機関が置かれているのかを整理する必要があります。
特例有限会社の株式譲渡には特別なルールがある
特例有限会社の株式には、株式譲渡について特別な扱いがあります。
特例有限会社では、株式を譲渡によって取得する場合について、会社の承認を必要とする定めがあるものとみなされます。
ただし、株主間で株式を譲渡する場合には、会社が承認したものとみなされる特則があります。
そのため、株主以外の第三者へ株式を譲渡する場合と、現在の株主間で株式を譲渡する場合では、確認すべき点が異なります。
株式の譲渡によって株主構成が変わる場合には、単に株式の売買だけを考えるのではなく、
- 誰が新しい株主になるのか
- 議決権の割合がどう変わるのか
- 定款にどのような定めがあるのか
- 株主名簿の記載をどう変更するのか
なども確認しておきましょう。
特例有限会社は一定の組織再編ができない
特例有限会社には、通常の株式会社とは異なり、利用できない組織再編があります。
例えば、特例有限会社は、一定の組織再編において吸収合併の存続会社や吸収分割の承継会社になることができません。
また、株式交換・株式移転・株式交付についても、通常の株式会社とは異なる制限があります。
そのため、事業承継やグループ会社化、会社の再編などを検討している場合には、早い段階で現在の会社形態を確認しておくことが重要です。
特例有限会社から株式会社へ移行することもできる
「有限会社という名前をやめて、株式会社にしたい」という場合には、特例有限会社から通常の株式会社へ移行することができます。
この場合、単純に商号だけを変更するわけではありません。
株主総会で商号を「株式会社○○」などに変更する旨の定款変更を決議したうえで、
- 特例有限会社について解散の登記
- 商号変更後の株式会社について設立の登記
を同時に申請することになります。
単に「有限会社を株式会社に名称変更する」という手続きではないため、移行を検討する場合は、必要な手続きを事前に確認しておきましょう。
休眠会社のみなし解散に関する規定の適用が除外されている
株式会社の取締役や監査役には、任期があります。原則、取締役の任期は2年ですが、定款で最大10年まで伸長することができるので、少なくとも10年に1回は登記申請をする必要があります。
最後に登記をしたときから12年を経過したときは休眠会社として整理の対象となり、官報への公告と登記所から通知書が届くこととなっています。
そして、株式会社が、2か月以内に役員変更などの必要な登記または「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしなかった場合は、登記官が職権で解散の登記をすることとされています(会社法472条)。
これに対して、有限会社には任期がありませんので、株式会社で規定されているみなし解散に関する規定が除外されています(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 抄32条)。
特例有限会社の役員変更で注意したいこと
特例有限会社は役員の任期がないため、株式会社のように任期満了による役員変更登記が定期的に発生するわけではありません。
一方で、実際に役員が変わった場合には変更登記が必要になります。
例えば、
- 取締役が辞任した
- 取締役が死亡した
- 新しい取締役を選任した
- 代表取締役が変わった
といったケースです。
「有限会社だから役員変更登記は必要ない」と考えてしまわないよう注意しましょう。
また、定款で任期を定めている場合には、その内容も確認する必要があります。
役員変更があるときは登記申請が必要になります。
会社・法人登記のサービスページはこちらをご覧ください。
→ 会社・法人登記のサービスページ
特例有限会社の定款を確認してみる
特例有限会社は、会社法施行前から存続している会社です。
そのため、現在の会社の実態と、古い時期に作成された定款の内容が合っていないケースもあります。
例えば、
- 現在の役員構成と定款の記載が合っているか
- 会社の目的が現在の事業内容に合っているか
- 株式に関する定めを確認したか
- 代表者に関する定めが現在の運営と合っているか
などです。
会社の事業内容や役員構成が変わったときには、登記だけでなく定款も一緒に確認すると、現在の会社の状態を整理しやすくなります。
特例有限会社について確認しておきたいこと
特例有限会社を経営している場合、まずは次の点を確認してみましょう。
- 自社が特例有限会社として登記されているか
- 現在の役員構成と登記記録が一致しているか
- 定款の内容が現在の会社の運営と合っているか
- 株主構成に変更がないか
- 株式を譲渡する予定がないか
- 事業内容と会社の目的が合っているか
- 株式会社への移行を検討する必要がないか
特に、長期間にわたって役員変更や定款の見直しをしていない場合には、一度現在の会社の状態を確認してみるとよいでしょう。
まとめ
特例有限会社は、現在新しく設立することはできませんが、会社法施行前から存在していた有限会社は、現在も特例有限会社として存続しています。
特例有限会社には、
- 役員の任期に法定の期限がない
- 決算公告の義務がない
- 取締役会を設置できない
- 株式譲渡について特別なルールがある
- 一定の組織再編に制限がある
など、通常の株式会社とは異なる特徴があります。
一方で、役員変更などの登記が必要になる場面はあります。
また、株式会社への移行を検討することもできます。
「昔から有限会社のままだけれど、今の定款や登記の状態で問題ないのか分からない」という場合は、まず現在の会社の状態を整理するところから始めてみるとよいでしょう。


