株式会社の解散と清算の違いを解説!登記手続きのタイミングから留意点まで

株式会社の解散と清算は、株式会社が理由があって事業を終了するときに必ず知っておくべき重要なプロセスです。この記事では、それらの違いを詳しく解説し、手続きや留意点を紹介します。
なお、この記事の解散は、株式会社による解散の場合により、また合併による解散を除きます。

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株式会社の解散とは?

株式会社の解散とは、会社としての法律上の存続を終了させる手続きです。株式会社が解散する方法はいくつか存在し、それぞれの事情や状況によって異なります。ここでは、株式会社がどのような場合に解散となるのか、主なケースを詳しくご紹介します。

定款による解散

定款とは、会社の基本的なルールをまとめたもので、会社の組織や運営に関する重要な事項が記載されています。
定款に解散事由が定められている場合、その事由が発生した際に会社は解散することとなります。

例えば、定款に「設立から10年経過したら解散する」という条項が記載されている場合は、その条件が満たされた時点で会社は自動的に解散となります。定款による解散は、会社があらかじめ自ら決めたルールに従って組織を終了させる方法のひとつです。

裁判所による解散命令

裁判所が命令を下して会社を解散させるケースもあります。

例えば、会社が債務超過で事業を継続することが困難な場合や訴えにより、裁判所が会社の解散を命じることがあります。裁判所の判断によって解散命令が出された場合、会社はその命令に従い解散しなければなりません。

株主総会による解散決議

最も一般的な解散のケースは、株主総会で解散の決議が可決される場合です。

株主総会は、会社の最高意思決定機関であり、株式会社の解散を決議する権限を持っています。
株主総会で解散を決議するためには、特別決議が必要となります。
特別決議とは、株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければなりません(会社法309条2項)。

解散決議がなされた場合には、2週間以内に法務局でその旨の登記手続きを行う必要があります。

みなし解散(職権による解散)

最後に登記を行ってから12年以上が経過した場合、いわゆる「休眠会社」とみなされます。

休眠会社とみなされれば整理の対象となり、法務大臣による官報公告と登記所から通知書が届きます。株式会社が、官報公告から2か月以内に役員変更などの必要な登記または「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしなければ、登記官によって職権で解散の登記がなされます(会社法472条)。

株式会社の清算とは?

株式会社が事業を終了する際には、まず「解散」の手続きを行い、その後に「清算」手続きを進める必要があります。つまり、会社を完全に終了させるためには、解散と清算という2段階のプロセスを経ることとなります。

清算の種類|任意清算と法定清算

「清算」とは、解散した会社の財産や債務を整理し、最後に残った資産を株主に分配する手続きです。清算方法には「任意清算」と「法定清算」の2つがあります。

任意清算は、会社(合名会社と合資会社)が定款や総社員の同意により清算手続きを行う方法です。法定清算は、会社法で定められた方法により行う清算手続きのことをいいます。

株式会社・有限会社・合同会社などでは任意清算は認められていません。そのため、会社法に従った「法定清算」が必要です。

清算人の選任とその役割

清算人は、株式会社の財産を整理し、債務を弁済し、残余財産を株主に分配する役割を担います。また、清算人には年1回以上、清算業務の進捗状況を報告する義務もあります。

清算人の選び方は、定款の定めに従う場合、株主総会で決議する場合、もしくは解散前の取締役が自動的に「法定清算人」となる場合があります。

解散から清算結了までの流れ

解散の登記と清算人の登記

株式会社が定款による解散、株主総会による解散をした場合、解散の登記をしなければなりません。解散の登記は、解散の事由が発生した日から2週間以内にしなければなりません。
会社が解散したら清算人を置かなければならず、その清算人の登記もする必要があるため、解散の登記と清算人の登記を同時にすることが一般的です。

清算手続きから清算結了登記まで

清算人は、現務の結了や債権の取立て及び債務の弁済、残余財産の株主への分配といった清算手続きを行います。また、債権者に対する「債権申出の公告」「催告」も必要であり、この公告等には最低でも2か月間の期間を設ける必要があります。

また、清算人は、清算事務が終了したら決算報告書の作成をし、株主総会でその決算報告書の承認を受けます。

承認を受けたら、その承認を受けた日から2週間以内に清算結了の登記を行います。
清算結了の登記が完了すると、会社の登記記録が閉鎖されます。

清算結了の登記は、債権者への債権申出の公告や催告を行う期間に最低2か月を要するため、清算人就任後2ヶ月以内である場合は、清算結了の登記することができません。

まとめ

「解散」は会社が事業活動を終了する手続き、「清算」は、解散後に財産や負債の整理を行い、会社のすべてを整理し切ったうえで完全に法人格を消滅させる手続きです。
株式会社を消滅させる際には、これらの手続きを会社法に則り正確に進める必要があります。

当事務所では、会社の解散清算手続きのご相談もお受けしておりますので、お気軽にご連絡ください。