権利証がない!再発行はできない?不動産の名義変更時の対処法

不動産の名義変更(移転登記)や金融機関から借り入れをして所有不動産に抵当権を設定するときなどに必要となる権利証(登記済証や登記識別情報通知のこと)。
もし紛失してしまったらどうすれば良いのでしょうか?権利証がない場合の対処法とその違いについてまとめました。

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権利証とは?不動産登記における重要性

権利証の役割と種類

権利証は、不動産の登記名義人がその不動産につき権利を有していることを証明する重要な書類になります。

権利証は、法務局に不動産登記の申請をした際に、その申請人がその不動産の名義人になったときに、その申請人に対して発行されます。

以前は登記済証が発行されていましたが、現在では、12桁の英数字等の組み合わせによる登記識別情報が通知されるようになっています。

権利証が必要となる場面

不動産の登記申請は、原則、権利に関する登記をすることにより、登記上、直接に利益を受ける者(=「登記義務者」)と不利益を受ける者(=「登記義務者」)が共同して申請することとなっています。

例えば、不動産の売買があったときは、売主(現在の不動産の登記名義人)が「登記義務者」、買主(新たに不動産を取得する者)が「登記権利者」となります。

他には、金融機関等からお金を借りて、所有している不動産に抵当権を設定するときは、お金を貸した金融機関等が「登記権利者」、お金を借りた者が「登記義務者」となります。

共同申請をするときは、直接に不利益を受ける真実の登記義務者がその共同申請に関与していることを確認する必要があります。そこで、登記義務者のみが持つ登記済証(現在の登記識別情報通知)を提供させ、真実の登記義務者がその共同申請に関与していることを確認し、登記の申請を担保しようとするものになります。

不動産の登記申請は、原則、登記義務者と登記権利者が共同して登記申請することとなっていますが、もちろん例外はあります。

相続登記や不動産の名義人が住所や氏名を変更したときの変更登記がその例外に当たります。
共同申請にならないときは、権利証は必要ありません。
(ただし、相続登記のときは、別の観点から必要になることがあります。)

権利証は再発行ができない

残念ながら、権利証(登記済証や登記識別情報)は再発行という概念がなく、一度紛失すると再発行はされません。

そのため、紛失しないように大切に保管しましょう。

権利証を紛失した場合の具体的な対処法

権利証は再発行されないことは、先ほど述べましたが、では、権利証が手元にない場合、共同申請するときはどうしたらよいのでしょうか?
具体的には「事前通知制度の利用」「公証人による認証」「司法書士による本人確認情報の提供」の3つの方法があります。

事前通知制度の利用

権利証を提供しなければならない登記申請が、権利証なしになされたときは、登記義務者に対し、「①申請があった旨」と「②その申請内容が真実であるときは通知が発送された日から2週間(住所が外国であるときは4週間)以内に申出をすべき旨」を通知することとされています。
この通知は、オンラインで登記申請がなされたときであっても、書面で通知されることとなっています。

また、申出期間の起算点については、通知があった日ではなく、通知が発送された日となっている点に注意しましょう。

そして、登記義務者が自然人の場合(または法人であっても法人の代表者に郵送する場合)は本人限定受取通便などの方法により、法人の場合は書留郵便などの方法により送付されます。

本人限定受取郵便とは、本人以外は受け取れず、免許証やマイナンバーカード等の本人確認書類を提示しないと受け取りができない郵便物となります。

②のその申請内容が真実であるときの申出は、送られてきた回答書に署名と登記申請したときの申請書または代理申請したときは登記委任状に押印したものと同一の印を用いて押印したうえで、法務局に提出する方法で行います。

提出する方法は、期間内であれば、法務局に持参しても構いませんし、郵送でも構いません。
郵送するときは、追跡のできるレターパックプラス等を利用するといいでしょう。

このように、事前通知制度は、追加の費用はかかりませんが、時間もかかりますし、②の申出を期間内にしなければ、登記がされないこととなります。

例えば売買の場合、登記申請をする時点で買主から売主に売買代金が支払われたにもかかわらず、②の売主による申出がないため登記されないといった事態を招く恐れがありますので、利用できるケースが抵当権の抹消のような場合に限られます。

公証人による認証

事前通知を要する場合であっても、申請書または代理申請するときは登記委任状について、公証人による認証(私文書の認証)がされ、かつ、その内容が相当と認められるときは権利証がなくても登記されることとなっています。

公証人による認証を受けるにも費用はかかりますが、次の本人確認情報の作成よりも安価になります。

ただし、登記義務者が最寄りの公証役場へ行き(予約したうえで)、認証をうける書類を持参して、公証役場で署名捺印をする必要があります。

認証を受ける書類は、事前に「法務局への確認」と「公証人への確認」が必要になるため、十分に時間のゆとりがなければできない方法になります。

本人確認情報の作成

本人確認情報の作成とは、権利証の代わりに、司法書士が申請人と実際に面談をしたうえで、その申請人が登記義務者であることを確認するために必要な情報を作成する方法です。その作成された本人確認情報を申請書と一緒に提供し、かつ、その内容が相当と認められるときは登記されることとなっています。

申請人が法人である場合には、原則として代表者、大企業などで代表者と面談できないときは代表者に代わるべき者(この場合は、業務権限証明書なるものも必要)と面談をすることになります。

この本人確認の際には、免許証やマイナンバーカード、その他書類の提示と質問に対する回答の内容により登記義務者であることを確認します。

まとめ

権利証は大変重要な書類ですが、紛失した場合でも、事前通知制度の活用、公証人による認証、司法書士による本人確認などの方法により登記申請はできます。

どのような方法がいいのかは、事案により判断が異なります。
不動産登記に関するご質問がございましたら、お気軽にご連絡ください。