不正登記防止申出とは?登記識別情報の失効申出との違い・手続きを解説
不動産の権利証や登記識別情報を紛失したり、盗まれたりした場合、「誰かに勝手に名義変更されてしまうのではないか」と不安になることがあるかもしれません。
そのようなときに検討できる制度として、「不正登記防止申出」と「登記識別情報の失効の申出」があります。
どちらも不正な登記への対策として利用される制度ですが、目的や利用できる場面は異なります。
- 不正登記防止申出:第三者による不正な登記申請がされる差し迫った危険がある場合に、法務局へ申し出る制度
- 登記識別情報の失効の申出:登記識別情報の効力を失わせる制度
この記事では、それぞれの制度の違い、利用を検討する場面、手続きの方法や注意点について解説します。
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不正登記防止申出とは?
不正登記防止申出とは、第三者によって不正な登記申請がされる差し迫った危険がある場合に、登記名義人などが法務局へ申し出る制度です。
- 登記識別情報を盗まれ、不正な登記に利用される具体的な危険がある
- 権利証や実印などを盗まれ、第三者による不正な登記が心配される
- 登記名義人になりすまして登記申請がされるおそれがある
このような場合に利用が検討されます。
不正登記防止申出が認められるとどうなる?
法務局が申出を相当と認めた場合、申出から3か月以内に、その申出に係る登記申請があったときは、申出人に通知し、登記官が申請人の本人確認を行うなどの対応がとられます。
不正な登記申請が行われることを防ぐための対応が期待できます。
ただし、不正登記防止申出をしたからといって、登記申請そのものが禁止されるわけではありません。
申出が認められた場合でも、その効力は原則として申出から3か月です。引き続き危険がある場合には、改めて申出を検討する必要があります。
不正登記防止申出の手続き
不正登記防止申出は、対象となる不動産を管轄する法務局で手続きを行います。
申出の際には、一般に次のような事項を確認・説明することになります。
- 不正な登記がされるおそれのある不動産
- 不正な登記がされると考える具体的な事情
- これまでの経緯や、申出人が講じた措置
登記識別情報が盗まれた場合には、盗難の状況や警察への届出などが事情を説明することとなります。
申出は、原則として本人が法務局へ出向いて行います。ただし、本人が出向くことができないやむを得ない事情がある場合には、代理人による申出が認められることがあります。
申出書には、実印を押し、印鑑証明書を添付しなければなりません。また、申出をする際には、マイナンバーカードなどの本人確認ができる書類も必要です。
不正登記防止申出そのものに手数料はかかりません。
登記識別情報の失効の申出とは?
登記識別情報の失効の申出とは、登記名義人などが、通知を受けた登記識別情報の効力を失わせるために行う手続きです(不動産登記規則65条)。
登記識別情報は、不動産の登記名義人本人による登記申請であることを確認するための情報の一つです。現在は、従来の権利証に代わり、12桁の符号で通知されています。
登記識別情報を盗まれた場合や、第三者に知られた可能性がある場合などには、その情報が不正な登記申請に利用されないよう、失効の申出を検討できます。また、登記識別情報を紛失した場合にも、失効の申出を利用できます。
登記識別情報を失効させるとどうなる?
失効の申出が認められると、対象となる登記識別情報は効力を失います。
当然といえますが、登記識別情報を失効させても、不動産の所有権などの権利がなくなるわけではありません。
一度失効させた登記識別情報を再発行してもらうことはできません。
将来、不動産の売却や抵当権設定などの登記を行う際には、登記識別情報を提供できないため、本人確認のための別の手続きが必要になる場合があります。その際には、状況に応じて費用や時間がかかることもあります。
そのため、単に紛失したという理由だけで急いで失効させるのではなく、今後の不動産取引などへの影響も踏まえて判断することが大切です。
登記識別情報の失効の申出の手続き
失効の申出ができるのは、登記識別情報の通知を受けた登記名義人や、その相続人その他の一般承継人です。
手続きは、書面またはオンラインで行うことができます。
申出には、申出人の印鑑証明書(作成後3か月以内のもの)が必要になります(不動産登記規則65条10項、不動産登記令16条)。
不動産の登記名義人の相続人が申出をするときは、相続人であることを証する戸籍謄本等が必要です。
登記識別情報の失効の申出そのものに手数料はかかりません。
必要書類の取得費用や、専門家に手続きを依頼する場合の報酬などは別途費用がかかります。
不正登記防止申出と登記識別情報の失効申出の違い
2つの制度は、どちらも不正な登記への対策として利用されますが、目的や効果が異なります。
| 比較項目 | 不正登記防止申出 | 登記識別情報の失効の申出 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 不正な登記申請への対応 | 登記識別情報の効力を失わせる |
| 利用する場面 | 不正な登記がされる差し迫った危険がある場合 | 登記識別情報を紛失・盗難された場合など |
| 主な効果 | 関連する登記申請があった場合の通知や本人確認など | 対象の登記識別情報が失効する |
| 効力の期間 | 申出から3か月 | 失効後、再発行はできない |
| 登記申請そのものの禁止 | されない | 登記識別情報を使えなくなるが、登記申請自体は可能 |
| 手数料 | なし | なし |
どちらの制度を利用するかは、紛失や盗難の状況、不正利用の危険性、今後の不動産取引の予定などを踏まえて判断する必要があります。
権利証を紛失したら、必ず失効の申出をするべき?
権利証や登記識別情報を紛失したからといって、必ず失効の申出をしなければならないわけではありません。
まずは、紛失したものが何なのかを確認しましょう。
登記識別情報通知を紛失した場合
登記識別情報通知に記載された12桁の符号が登記識別情報です。
この情報が第三者に知られた可能性がある場合や、盗難にあった場合には、失効の申出を検討できます。
ただし、登記識別情報だけで自由に不動産の名義を変更できるわけではありません。登記申請では、登記の種類に応じて本人確認のための手続きが行われます。
紛失した状況や不正利用の危険性を踏まえ、失効の申出が必要かどうかを検討しましょう。
従来の登記済証(権利証)を紛失した場合
従来の登記済証は、現在の登記識別情報とは異なる制度です。
登記済証を紛失しても、所有権などの権利がなくなるわけではありません。また、登記済証そのものについて、登記識別情報の失効の申出をすることはできません。
今後、不動産を売却する場合などには、登記済証に代わる本人確認の手続きが必要になることがあります。
権利証を紛失した場合の具体的な対応については、次の記事もご覧ください。
▶ 権利証を紛失したら?相続登記・不動産売買での対処法を司法書士が解説
相続登記の場合はどうなる?
相続による所有権移転登記では、通常、亡くなった方の登記識別情報や権利証を添付する必要はありません。
ただし、相続の内容や登記記録の状況によっては、別途確認が必要になる場合があります。
相続登記で権利証が必要になるケースについては、次の記事で解説しています。
▶ 権利証がなくても相続登記はできる?必要になるケースと確認しておきたいこと
不正な登記が心配な場合に確認しておきたいこと
権利証や登記識別情報を紛失した場合、まずは状況を整理することが大切です。
次の点を確認してみましょう。
- 紛失したのは、従来の登記済証か、登記識別情報通知か
- 単に保管場所が分からなくなったのか、盗難や第三者への流出が疑われるのか
- 実印など、ほかの重要な書類や情報も失われていないか
- 不動産の売却や担保設定など、近いうちに予定している手続きがあるか
盗難や不正利用が疑われる場合には、警察への相談も含めて対応を検討してください。
不正な登記がされる差し迫った危険がある場合には、不正登記防止申出を検討します。一方、登記識別情報自体の効力を失わせたい場合には、失効の申出が選択肢になります。
どちらの制度が適切か分からない場合は、状況を整理したうえで、管轄法務局や司法書士に相談するとよいでしょう。
まとめ
不正登記防止申出と登記識別情報の失効の申出は、どちらも不正な登記への対策として利用されますが、制度の目的や効果は異なります。
- 不正登記防止申出は、不正な登記がされる差し迫った危険がある場合に、法務局へ申し出る制度
- 登記識別情報の失効の申出は、登記識別情報の効力を失わせる制度
- どちらも、申出をすれば登記申請そのものが禁止されるわけではない
- 登記識別情報を失効させると再発行できないため、今後の不動産取引への影響も考慮する
権利証や登記識別情報を紛失したからといって、必ずしも直ちに失効の申出をする必要があるわけではありません。まずは紛失したものの種類や状況を確認し、必要な対応を検討しましょう。


