役員変更の登記方法と注意点(取締役と監査役の場合)
株式会社の取締役や監査役には任期があり、株主総会で選任することとされています(会社法第329条第1項)。
任期の前後で取締役や代表取締役、監査役に変更がなくても法務局に登記をしないといけません。
登記を怠ると会社ではなく代表取締役等の個人に100万円以下の過料が処される可能性があります(会社法第976条)。
ですので、もし過料が科されたときは代表取締役等の住所に書類が届くことになります。
今回は、取締役と監査役の役員変更登記について解説します。
代表取締役は、それだけでボリュームが大きくなるので別の記事でまとめています。
また、有限会社の役員には任期がありません。有限会社についてはこちらの記事をご覧ください。
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役員(取締役と監査役)の任期
役員の任期(原則)
取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(会社法第332条第1項)、
監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(会社法第336条第1項)となっています。
また、定時株主総会は、会社法では毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない(会社法第296条第1項)とされています。
定款で3か月以内と定めていれば、3か月以内に開催すればいいことになります。
しかし、法人税の確定申告は株主総会で承認を受ける必要があり、ほとんどの会社は2か月以内に法人税の申告をされているケースが多いので、
そのような場合は2か月以内に定時株主総会を開催することになります。
例えば、会社の決算月が3月末で取締役に選任された日が2021年5月28日だったとします。
そして、定時株主総会の開催を定款で2か月以内に開催すると定め、会社の慣行上、毎年5月の最後の金曜日に開催していたとします。
この場合、「選任後2年以内」は、2023年5月25日以内になります。
「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のもの」とは、2023年5月25日以内に終了し、かつ最後の事業年度である2022年4月1日から2023年3月31日となります。
その「最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」となるので、2023年5月26日の定時株主総会が終結する時までとなります。
役員の任期(伸長・短縮)
公開会社でない株式会社は、取締役や監査役の任期を、定款で、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができます(会社法第332条第2項、第336条第2項)。
公開会社とは、発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社とされています(会社法第2条)。
よって、公開会社でない株式会社とは、全部の株式の譲渡について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けている会社となります。
なお、株式の譲渡につき株式会社の承認の定めがある場合は、その旨の登記をしなければなりません。
また、取締役に限り、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することもできます(会社法第332条第1項)。
役員変更登記の必要書類
役員の選任とその就任に関する書類が必要になります。
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 定款 ※1
- 就任承諾書(株主総会議事録で援用するケースもある)
- 取締役会を設置しない会社で、新しく就任する取締役の印鑑証明書
- 新しく就任する取締役または監査役の本人確認書類 ※2、※3
※1 定時株主総会の開催時期を証するために添付する。定時株主総会議事録で、当該総会終結時に任期が満了する旨の記載があれば不要
※2 住民票の写し(個人番号の記載なし)や運転免許証のコピー(両面・原本証明必要)など
※3 印鑑証明書を提出する場合は、本人確認書類は必要ありません
これらの必要書類は、法令や定款、実態に適合した内容と必要な押印がなされる必要があります。
役員変更の登記の期限
役員変更の登記は、変更が生じた時から2週間以内に本店の所在地を管轄する法務局に
変更の登記を申請しなければなりません(会社法第915条第1項)。
役員変更登記にかかる費用
役員変更登記にかかる登録免許税は、資本金の額により異なります。
資本金の額が1億円以下の会社の場合、1万円
資本金の額が1億円未満の会社の場合、3万円
また、必要書類の作成や登記申請手続きを司法書士に依頼すれば、報酬が必要になります。
役員変更登記を怠ったときのデメリット
役員変更の登記を怠ったら、会社ではなく代表取締役等に100万円以下の過料が処される可能性があることは既に述べましたが、
株式会社の場合、会社が解散したものとみなされる恐れがあります。
株式会社が、最後に登記をしたときから12年を経過したときは休眠会社の整理の対象となり、法務大臣による官報公告と登記所から通知書が届きます。株式会社が、官報公告から2か月以内に役員変更などの必要な登記または「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしなかった場合は、登記官が職権で解散の登記をします。
職権で解散の登記がなされた後でも、3年以内に限り株主総会決議によって会社を継続することができます。
最後に
会社の登記で一番多い取締役と監査役の役員変更登記について解説しました。
新たに就任する役員がいる場合は、関係先に挨拶状を送付することを検討してもいいかもしれません。
役員変更登記は、とても奥が深いです。
お気軽にご相談ください。