就業規則における懲戒処分の規定と運用方法
会社(個人事業主を含む)は、従業員の行為が企業の秩序や業務に悪影響を及ぼす場合、その従業員に対して懲戒処分を検討することあります。
では、自由に懲戒処分の決定をすることができるのでしょうか?
この記事では、就業規則における懲戒処分の規定方法や実際に処分を行う際の注意点について細かく解説します。就業規則を作成する際の参考にしてください。
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目次
就業規則に定める懲戒規定の基本
懲戒処分の概要
懲戒処分とは、従業員が就業規則に違反した場合などに、会社が従業員に対して行う懲罰的な処分のことです。
会社が懲戒処分を行うには、必ず就業規則に懲戒規定を設けることが義務付けられています。
懲戒処分は、従業員の権利を制限する可能性があるため、その内容や手続きは労働基準法などの法律に基づいて、慎重に定める必要があります。
懲戒の種類
懲戒処分には、一般的に軽いものから戒告、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇があります。それぞれの懲戒処分は、違反行為の重大性や従業員の過去の違反歴などを考慮して、過度な懲戒処分にならないよう適切に選択される必要があります。
また、同一の事案に対し複数回懲戒処分を行うことはできません。
懲戒処分の手続き
懲戒処分を行う際には、公正な手続きを踏む必要があります。
具体的には、懲戒事由を明確に示し、従業員に弁明の機会を与え、証拠を十分に検討した上で、懲戒処分を決定する必要があります。
また、懲戒処分が決定した場合には、その内容を従業員に書面で通知するなどにより、後に重大な争いになったときに困らないような手続きをとることも大切です。
減給の制限
減給処分は、労働基準法によって、賃金の一定割合を超えて減給することは禁止されています。
具体的には、減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないとされています(労基法91条)。
減給処分を行う際には、減給の期間や減給される賃金の割合などを明確に定める必要があります。
なお、出勤停止により働かなかった従業員に対してその期間分の賃金の支払いをしないものについては、この減給の制限は適用されません。働かなければ賃金が発生しないものだからです。これを、「ノーワーク・ノーペイの原則」をいいます。
懲戒事由の定め方
包括的な規定
懲戒事由の規定は、できるだけ具体的に定めることが望ましいですが、すべての事由を列挙することは現実的に困難です。
就業規則には、具体的な事由に加えて、包括的な懲戒事由を定めることも有効です。
包括的な懲戒事由としては、例えば、「会社の信用を低下させる行為があったとき」や「故意又は過失により会社に損害を発生させたとき」などが挙げられます。
懲戒事由明示の重要性
従業員が自分の行為が懲戒処分に該当するかどうかを理解し、会社が懲戒処分を行う際に、懲戒事由の根拠を明確にすることも非常に重要です。
懲戒事由が曖昧なまま懲戒処分を行うと、従業員との争いに発展する可能性が高くなります。
懲戒手続きの注意点
懲戒の有効性
懲戒処分は、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされています(労働契約法15条、16条)。
懲戒事由と懲戒処分とのバランスを慎重に見極める必要があります。
手続の公正さ
懲戒処分を行う際には、従業員の権利を尊重し、公正な手続きを踏む必要があります。具体的には、懲戒事由を明確に示し、従業員に弁明の機会を与え、証拠を十分に検討した上で、懲戒処分を決定する必要があります。
弁明の機会の提供
懲戒処分を行う前に、従業員に弁明の機会を与える際には、懲戒事由を明確に示し、従業員が十分に弁明できるよう、十分な時間と機会を与える必要があります。重い懲戒処分を与えるような場合には、複数回、弁明の機会を設けることも検討しましょう。
また、弁明の機会を設ける際には、プライバシーを確保することも大切ですが、従業員に心理的負荷を与えないような環境を作る配慮も必要でしょう。
通知方法
懲戒処分の通知は、書面で行いましょう。通知書には、懲戒事由、懲戒処分の内容、処分の日付などを明記します。また、通知書は、従業員に直接手渡すなど、確実に受け取れる方法で送付しましょう。場合によっては、受け取りのサインをもらいましょう。
懲戒処分の適切な運用
懲戒処分は、あくまでも就業規則違反に対する最終手段として、慎重に運用する必要があります。懲戒処分を行う前に、従業員に対して、指導や教育を行い、改善を促すことが重要です。また、懲戒処分を行う際には、従業員のプライバシーや人権を尊重し、公正な手続きを踏むことが重要です。
まとめ
就業規則における懲戒処分の規定は、会社にとって従業員の規律維持や秩序の確保、会社の信用を守る上で重要ですが、従業員の権利を制限する可能性があるため、その内容や手続きは労働基準法などの法律、社会通念上相当であるかなどにより、慎重に定める必要があります。
懲戒処分を行う際には、従業員に弁明の機会を与えるなど、公正な手続きを踏むことが重要です。また、懲戒事由を具体的に明示し、従業員が自分の行為が懲戒処分に該当するかどうかを理解できるようにすることも重要です。