年次有給休暇の計画的付与制度とは?就業規則の規定と導入手順

年次有給休暇を取得してほしいと思っていても、従業員が遠慮して休暇を申請しなかったり、業務の都合で取得時期が偏ったりすることはありませんか。そのような場合に検討できるのが、年次有給休暇の「計画的付与制度」です。

計画的付与制度を導入すると、夏季休業や年末年始の休業に合わせたり、従業員ごとに取得日を決めたりすることで、年次有給休暇の取得を計画的に進められます。

ただし、会社が自由に取得日を指定できるわけではありません。制度の導入には、就業規則への規定と労使協定の締結が必要です。また、従業員が自由に取得できる年次有給休暇を確保することも求められます。

この記事では、計画的付与制度の仕組みから、導入手順、労使協定で定める内容、運用上の注意点までを解説します。

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年次有給休暇の計画的付与制度とは

計画的付与制度の仕組み

年次有給休暇の計画的付与制度とは、労使協定を締結することで、従業員が保有する年次有給休暇のうち、5日を超える部分について、会社があらかじめ取得日を割り振ることができる制度です。

例えば、次のような方法があります。

  • 夏季休業や年末年始の休業に合わせて、事業場全体で取得する
  • 部署や班ごとに取得日をずらす
  • 従業員ごとに年次有給休暇の取得計画を作成する

業務の繁閑の差が大きい企業や、従業員の休暇取得率が低い企業にとって特にメリットがあります。たとえば、サービス業においては、業務が忙しくない時期に計画的に休暇を付与することで、従業員の負担を軽減し、サービスの質を維持することができます。

会社の業務形態や従業員の勤務状況に合わせて、適した方法を選ぶことができます。

計画的付与制度を導入するメリット

計画的付与制度には、会社と従業員の双方にメリットがあります。

会社にとっては、休業日や繁閑に合わせて休暇を計画できるため、業務の予定を立てやすくなります。従業員も、あらかじめ取得日が決まっていれば、休暇の予定を立てやすくなります。

また、年次有給休暇を申請することに遠慮を感じる従業員にとっても、取得のきっかけになります。

ただし、制度を導入するだけで休暇取得が円滑に進むとは限りません。業務の引継ぎや人員配置も含めて、実際に運用できる仕組みを整えることが大切です。

計画的付与の対象にできる日数

最低5日は従業員が自由に取得できるようにする

計画的付与の対象にできるのは、年次有給休暇のうち5日を超える部分です。少なくとも5日は、従業員が自分の希望する時季に取得できるように残しておく必要があります。

例えば、次のようになります。

年次有給休暇の付与日数計画的付与の対象にできる日数自由に取得できる日数
10日5日5日
15日10日5日
20日15日5日

上の表は、その年度に付与された年次有給休暇の日数を基にした例です。実際の対象日数を決める際は、繰越分や従業員ごとの保有日数も確認しましょう。

なお、計画的付与の対象にできる日数があるからといって、会社がそのすべてを必ず計画的付与にする必要があるわけではありません。制度の目的や職場の状況に応じて、対象日数を決めることができます。

年5日の取得義務との違い

年次有給休暇については、法定の日数が10日以上付与される従業員に対し、会社が付与日から1年以内に5日を取得させる義務があります。この年5日の取得義務と、計画的付与制度は別の仕組みです。

計画的付与によって取得した年次有給休暇は、年5日の取得義務に必要な取得日数に算入できます。ただし、計画的付与で取得させられる日数には、前述のとおり、従業員が自由に取得できる5日を残すという制限があります。

そのため、会社は計画的付与の日数だけでなく、従業員ごとの年次有給休暇の取得状況も把握しておく必要があります。

年次有給休暇の基本についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
→ 年次有給休暇の基本と就業規則|斉一的取扱いから退職時の取扱いまで

就業規則の周知についてはこちらで詳しく解説しています。
→ 就業規則の閲覧義務と従業員の権利|企業が知っておくべき対応

時間単位での年次有給休暇についてはこちらで詳しく解説しています。
→ 就業規則の時間単位年休規定|導入と運用の注意点

計画的付与制度の導入に必要な手続き

計画的付与制度を導入するには、主に次の2つの対応が必要です。

  1. 就業規則に計画的付与について定める
  2. 労使協定を締結する

就業規則への規定

計画的付与制度を導入する場合は、就業規則(絶対的記載事項)がある場合はその旨を定めます。

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を変更した場合、労働者代表などの意見書を添えて労働基準監督署に届け出る必要があります。

労使協定の締結

就業規則に規定するだけでは、計画的付与制度を実施できません。

実際に制度を導入する際は、事業場の過半数労働組合、または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による労使協定を締結します。この労使協定は、労働基準監督署への届出は不要ですが、適切に作成・保管しておく必要があります。

また、労働者の過半数代表者を選ぶ際は、会社が一方的に指名するのではなく、協定を締結するための代表者を適切な方法で選出することが大切です。

労使協定で定める内容

労使協定では、制度を実際に運用できるよう、対象者や取得日などを具体的に定めます。
主に確認したい事項は次のとおりです。

① 対象となる従業員の範囲

計画的付与の対象となる従業員を定めます。

例えば、特定の事業場や部署を対象とする場合は、その範囲を明確にします。また、計画的付与の時季に育児休業や産前産後休業に入ることが分かっている従業員、退職予定者などについても、対象者の範囲や取扱いをあらかじめ検討しておきましょう。

② 対象となる年次有給休暇の日数

計画的付与の対象日数を定めます。
従業員が自由に取得できる5日を確保できるよう、年次有給休暇の保有日数を踏まえて制度を設計する必要があります。

③ 計画的付与の具体的な方法

計画的付与には、主に次の3つの方式があります。

一斉付与方式

事業場全体を休業とし、従業員が同じ日に年次有給休暇を取得する方法です。夏季休業や年末年始など、会社全体で休業する日がある場合に検討できます。

交替制付与方式

部署や班などのグループごとに、取得日をずらす方法です。全員が同時に休むことが難しい職場に向いています。

個人別付与方式

従業員ごとに取得日を決める方法です。年次有給休暇の取得計画表を作成するなど、個人の予定と業務の状況を踏まえて調整します。

いずれの方式を採用する場合も、取得日や決定手続きが曖昧にならないように定めておくことが大切です。

④ 計画的付与日の変更手続き

急な業務上の事情などで、計画的付与日を変更する可能性がある場合は、変更の条件や手続きを労使協定に定めておきましょう。
会社の判断だけで自由に変更できるようにするのではなく、労使協定の内容に沿って対応できる仕組みにしておくことが重要です。

年次有給休暇の日数が少ない従業員への対応

計画的付与制度を導入する際に注意したいのが、保有する年次有給休暇の日数が少ない従業員の取扱いです。

例えば、会社全体で夏季休業に合わせて5日間の計画的付与を行う場合、その時点で年次有給休暇が5日を超えていない従業員には、同じ方法で休暇を割り振ることができません。

このような場合、会社は対象者を制度の対象から外すことや、計画的付与日に特別休暇を設けることなどを検討します。事業場全体を休業する方式で、年次有給休暇が不足している従業員を休業させる場合は、特別有給休暇を与える、または休業手当を支払うなどの対応が必要になることがあります。

制度を設計する段階で、従業員ごとの保有日数や勤務形態を確認し、取得日数が少ない従業員の取扱いを労使協定に定めておくと、導入後の混乱を防ぎやすくなります。

退職予定者や休業予定者の取扱い

計画的付与日より前に退職する予定の従業員や、育児休業・産前産後休業などに入ることが分かっている従業員については、制度を設計する段階で取扱いを検討しておくことが大切です。

計画的付与日が退職日より後であれば、その日を年次有給休暇として取得することはできません。予定されていた有給日数の取得を認める義務があります。退職する従業員は、計画的付与としていた日数も、退職までに取得することが可能です。

計画的付与制度を導入する前のチェックリスト

制度の導入前に、次の項目を確認しておきましょう。

  • 就業規則がある場合は計画的付与についての規定があるか
  • 労使協定を適切に締結しているか
  • 従業員が自由に取得できる5日を確保できるか
  • 対象者と対象日数が明確になっているか
  • 一斉付与・交替制付与・個人別付与のどの方式が自社に合うか
  • 年次有給休暇の日数が少ない従業員への対応を決めているか
  • 計画的付与日を変更する場合の手続きを定めているか
  • 退職予定者や休業予定者の取扱いを検討しているか
  • 年次有給休暇の取得状況を継続して管理できるか

制度を導入した後も、従業員の人数や勤務形態、業務の進め方が変わることがあります。就業規則や労使協定の内容と、実際の運用が合っているかを定期的に確認しましょう。

まとめ

年次有給休暇の計画的付与制度は、従業員が休暇を取得しやすくするとともに、会社が業務の予定を立てやすくするための制度です。導入するには、就業規則への規定と労使協定の締結が必要です。また、従業員が自由に取得できる年次有給休暇を確保し、対象者や取得日数、取得日の変更手続きなどを具体的に定めておく必要があります。

制度を導入することだけを目的にするのではなく、自社の業務や勤務形態に合った運用方法を検討することが大切です。

「就業規則の規定をどう整えればよいかわからない」「計画的付与を導入したいが、労使協定の内容に不安がある」といった場合は、制度の内容と実際の運用をあわせて確認してみましょう。

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