就業規則の時間単位年休規定|導入と運用の注意点
年次有給休暇は、原則として1日単位で取得するものですが、一定の要件を満たせば、1時間単位で取得できる制度を導入できます。
例えば、通院や役所での手続きなど、丸1日休む必要はないものの、数時間仕事を離れたい場面があります。時間単位年休を導入すれば、従業員が必要な時間だけ休暇を取得しやすくなります。
しかし、制度を導入するには、就業規則への規定や労使協定の締結が必要です。取得できる日数や時間の管理方法も、あらかじめ決めておかなければなりません。
この記事では、時間単位年休の導入に必要な手続きと、就業規則の規定・日々の運用で確認しておきたいポイントを解説します。
投稿者プロフィール

初回相談無料・オンライン相談対応
時間単位年休とは
時間単位年休とは、年次有給休暇を1時間単位など、時間単位で取得できる制度です。
通常の年次有給休暇は1日単位で取得することが原則ですが、労使協定を締結することで、年5日を上限として時間単位で取得できるようになります。
例えば、次のような場面で活用できます。
- 通院のため、午前中の数時間だけ休みたい
- 子どもの学校行事に参加するため、勤務時間を一部休みたい
- 役所などでの手続きのため、必要な時間だけ休暇を取りたい
従業員にとっては、1日休むほどではない用事にも年次有給休暇を活用しやすくなります。会社にとっても、従業員の働き方や生活上の事情に対応する制度の選択肢になります。
ただし、時間単位年休は、会社が自由にルールを決めて導入できる制度ではありません。法律上の要件を満たしたうえで、就業規則や労使協定を整える必要があります。
年次有給休暇の基本についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
→ 年次有給休暇の基本と就業規則|斉一的取扱いから退職時の取扱いまで
時間単位年休を導入するために必要な手続き
時間単位年休を導入する場合は、主に次の2点を確認します。
- 就業規則に時間単位年休について定める
- 労使協定を締結する
就業規則への記載
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、時間単位年休を導入するにあたり、就業規則にその内容を定める必要があります。
休暇に関する事項は、就業規則の必要記載事項に含まれます。すでに就業規則を作成している会社でも、時間単位年休を新たに導入する場合は、既存の年次有給休暇に関する規定との整合性を確認し、必要な変更を行いましょう。
就業規則の役割についてはこちらで詳しく解説しています。
→ 就業規則を作成するメリットとは?会社経営に欠かせない基本ルールと作成手順
労使協定の締結
時間単位年休を導入するには、事業場の過半数労働組合、または過半数代表者との書面による労使協定が必要です。
労使協定では、次の事項を定めます。
- 時間単位年休の対象となる労働者の範囲
- 時間単位で取得可能な日数(最大5日分まで)
- 時間単位年休を取得する場合の、1日分に相当する時間数
- 1時間以外の単位を設定する場合は、その時間数
対象者の範囲を定める際は、職務の内容や業務の実態を確認し、合理的に制度を設計することが大切です。
時間単位年休は、「1時間単位」での取得が多いですが、2時間単位など業務実態に合わせて設定することも可能です。
取得できる日数・時間の決め方
年5日が上限
時間単位年休として取得できるのは、1年につき5日分までです。ここでいう5日は、時間単位年休を利用できる上限です。会社が年次有給休暇を5日分しか付与できないという意味ではありません。
例えば、1日分を8時間とする場合、5日分は40時間です。ただし、1日分に相当する時間数は、個々の労働者の所定労働時間に応じて適切に定める必要があります。
1日分に相当する時間数
1日分に相当する時間数は、所定労働時間を基準に定めます。
例えば、所定労働時間が7時間45分の場合、1時間単位の時間単位年休のときは、1日分の時間数は、8時間とする取扱いが必要になります。
また、時間単位年休は1時間単位のほか、労使協定で定めれば2時間単位など、1時間の整数倍の単位で取得できるようにすることも可能です。分単位など、1時間未満の単位で取得させることはできません。
制度を設計するときは、従業員の勤務時間が一律かどうかも確認しましょう。勤務形態が複数ある会社では、1日分に相当する時間数を適切に定め、残時間数を正確に管理できる仕組みが必要です。
時間単位年休の賃金計算
時間単位年休を取得した時間については、法律で認められた方法により賃金を支払います。
賃金額の算定方法は、次のいずれかです。
- 平均賃金
- 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
- 労使協定を締結した場合の、標準報酬月額を基礎とする方法
どの方法を採用するかは、就業規則などで定めておく必要があります。標準報酬月額を基礎とする方法については、労使協定も必要です。通常の年次有給休暇と同様に、時間単位年休についても、取得した時間に応じた賃金の取扱いを明確にしておきましょう。
給与計算の担当者が迷わないよう、就業規則の記載と実際の給与計算方法を一致させることが大切です。
時間単位年休を運用するときの注意点
取得申請と業務の調整
時間単位年休を導入する際は、取得申請の方法や、勤怠システムへの入力方法などをあらかじめ決めておきましょう。
例えば、申請期限や承認の流れ、始業時・終業時に取得する場合の記録方法などを整理しておくと、従業員も管理担当者も迷いにくくなります。
なお、時間単位年休については、通常の年次有給休暇と同じように、会社が時季変更権を行使できますが、時間単位年休を日単位での年次有給休暇に変更できません。業務の調整が必要な場合は、制度の内容を踏まえて従業員と相談し、日頃から業務分担や引継ぎの方法を整えておくことが重要です。
取得状況と残時間数の管理
時間単位年休を導入すると、従業員ごとの取得日数だけでなく、取得時間数や残時間数も管理する必要があります。管理方法が曖昧なままだと、残りの取得可能時間を誤って案内したり、給与計算に誤りが生じたりするおそれがあります。
勤怠管理システムを利用する場合は、時間単位年休の設定や集計方法が制度に対応しているか確認しましょう。表計算ソフトなどで管理する場合も、付与日数、取得時間、残時間数を一貫した方法で記録できるようにしておくことが大切です。
就業規則を見直すときのチェックポイント
時間単位年休を導入するときや、すでに導入している制度を見直すときは、次の項目を確認しましょう。
- 就業規則に時間単位年休の規定があるか
- 労使協定を締結しているか
- 対象となる労働者の範囲が明確か
- 取得できる日数が年5日以内になっているか
- 1日分に相当する時間数と取得単位が適切か
- 時間単位年休の賃金計算方法が定められているか
- 取得時間と残時間数を正確に管理できているか
制度の導入時には問題がなくても、従業員の勤務形態や勤怠管理の方法が変わることで、現在の規定が実態に合わなくなることがあります。
規定の文言だけでなく、申請・承認・給与計算まで含めて確認することが重要です。
まとめ
時間単位年休は、従業員が必要な時間だけ休暇を取得できる制度です。導入にあたっては、就業規則への規定と労使協定の締結が必要であり、取得単位や日数、賃金計算、勤怠管理の方法も整えておく必要があります。
制度を導入すること自体が目的ではありません。自社の勤務形態や業務の進め方に合ったルールを設け、従業員も管理担当者も迷わず運用できる状態にすることが大切です。
「今の就業規則で問題ないか確認したい」「時間単位年休を導入したいけれど、規定や協定の作り方がわからない」といった場合は、就業規則と実際の運用をあわせて見直してみましょう。
就業規則の作成・見直しについてはサービスページをご覧ください。
→ 就業規則の作成・見直しについてはこちら


