取締役とは?会社との関係から責任までを解説

取締役は株主総会で選任され、取締役と株式会社との関係は、委任関係にあります。そして取締役は株式会社の経営において重要な役割を担っているとともに会社に対して責任も負っています。
この記事では、取締役についての基本と報酬、そして会社に対する責任の種類まで解説します。

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取締役の基本的な定義と報酬

取締役とは何か?

取締役は、株主総会決議により選任されます(会329条)。
取締役会を設置しない株式会社の取締役は、株式会社の業務を執行し、取締役が二人以上いるときは、原則取締役の過半数をもって株式会社の業務を決定します(会348条)。
取締役設置会社の取締役は、取締役会で業務執行の決定をし、代表取締役と取締役会の決議により選定された取締役が株式会社の業務を執行します(会362条、363条)。

選任された取締役と株式会社との関係は、会社法330条で、委任に関する規定に従うとされています。したがって、取締役は、善良な管理者の注意をもって職務を遂行する義務があります(民644条)。この善管注意義務の水準は、その地位・状況にある者に通常期待される程度のものとされています。

また、取締役は、職務を行うにつき、株式会社に対して忠実義務を負い、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守しなければなりません(会355条)。

取締役の選任要件と欠格事由

取締役の任期は会社法で定められており、選任には一定の要件があります。取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされています(会332条)。ただし、公開会社でない会社(非公開会社)においては、定款の定めによって任期を10年まで伸長することが可能です。
取締役の任期についてはコチラ

取締役の選任は、株主総会の(特則)普通決議によって行われます。
この特則付き普通決議とは、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行われる決議のことをいいます(会341条)。

また、取締役の選任には、会社法に定められた欠格事由に該当しないことが必要です。

取締役の欠格事由は、会社法331条で以下のように定められています。

  1. 法人
  2. 会社法・一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に違反し、または、金融商品取引法その他の法律の一定条項によって罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  3. 上記以外の法令の規定に違反し、禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで、又はその執行を受けることがなくなるまでの者(猶予中の者を除く)
  4. 公開会社以外の株式会社で、定款で取締役の資格を株主と定めたときは、株主ではない者(会331条2項)

取締役の選任要件は、会社法によって厳格に定められており、これらの要件を遵守しなければなりません。取締役の任期や選任要件は、会社により異なる場合がありますので、必ず定款を確認しましょう。

取締役の報酬

取締役の報酬は、定款で定めるか又は定款に定めがなければ株主総会の決議で定めることが求められます(会361条1項)。株主総会で決定されることが一般的です。
この規定の趣旨は、高額の報酬が株主の利益を害する危険を排除することにあります。したがって、定款や株主総会で取締役個々の報酬を定める必要はなく。株主総会で報酬総額のみを定め、各取締役の報酬額を取締役の過半数(取締役会が設置されている会社のときは取締役会)で決定することもできます。

取締役が負う責任と義務

任務懈怠

取締役は、会社に対して善管注意義務と忠実義務を負うことは前述しました。
これらの義務に違反したことにより会社に損害が生じたときは、取締役は賠償する責任を負います(会423条1項)。

取締役は、不確実な状況で決断をしなければならないことがあります。善管注意義務がつくされたか否かは結果論的に判断するものではなく、業務執行時の状況と取締役の能力水準に照らし合理的な検討や判断等が行われたかによるものとされています。

競業禁止義務

取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするときは、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(会356条1項1号)。承認をするのは、取締役会設置会社の場合は取締役会が、取締役会を設置していない会社の場合は株主総会(普通決議)になります(会356条、365条)。

これは、取締役が競業取引を行うと会社の利益を害する危険が大きくなるからです。

取締役が会社の承認を得ずに競業取引を行ったとしても、取締役と相手方との間で行われたその取引は有効です。

競業取引について会社の承認を得たとしても、取締役の責任が免責されるものではありません。競業取引をした取締役とその決議に賛成した取締役が、任務を怠ったときは、会社が損害を受けたときは、賠償する責任を負います(会423条1項)。取締役が承認を得ずに競業取引をしたときは、その取引により取締役が得た利益の額は、損害の額と推定されます(会423条2項)。

利益相反取引

取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき、または株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするときは、その取引につき重要な事実を開示し、会社の承認を受けなければなりません(会356条1項2号)。

利益相反取引にも会社の承認が必要とされるのは、利益相反取引も競業取引と同様、会社にとって不利益な取引をするおそれがあるからになります。
承認をするのは、競業取引と同じく取締役会設置会社の場合は取締役会が、取締役会を設置していない会社の場合は株主総会(普通決議)になります(会356条、365条)。また、承認を受けたとしても免責されない点も同様です。

会社の承認を受けずに行われた競業取引は有効でしたが、利益相反取引の場合は無効となります。ただし、会社は第三者の悪意を証明しない限り、第三者には無効を主張できないこととされています。

まとめ

取締役についての基本と報酬、そして会社に対する責任の種類について解説しました。
取締役は責任もありますがやりがいもあります。会社のお悩み事などございましたら、まずは、なんでもお聞かせください。