一般社団法人の設立手続きガイド|特徴や他の法人との違いとその流れを解説

一般社団法人を設立するには、特別な資格は必要ありません。本記事では、一般社団法人の設立を検討している方へ向けて、設立に当たっての基本を説明いたします。ぜひ参考にしてください。
なお、将来的に公益認定を受けようとする場合は、厳しい要件を満たす必要があり、設立の段階からそれに沿った運営が必要になります。今回は公益認定を目指していない方向けに書いたものになります。

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一般社団法人とは

一般社団法人とは

一般社団法人は、共通の目的を持つ複数の人が集まって設立できる法人です。類似した法人に「一般財団法人」がありますが、一般財団法人は特定の目的のために集められた「財産」に法人格を与えるものです。一方、一般社団法人は「人」の集団に法人格が付与されます。

株式会社も同じ法人格を持ちますが、一般社団法人とはいくつか大きな違いがあります。たとえば、株式会社では利益が生じた際に株主へ配当することが可能ですが、一般社団法人では剰余金(利益)の分配はできません。

一般社団法人設立の背景

一般社団法人は、2008年に施行された「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」によって新たに設けられた比較的新しいタイプの法人です。

それ以前は、社団法人の設立には許可を必要とし、税制上の優遇措置を受けることができる法人でしたが、設立手続きの煩雑さや不明確性などが問題とされていました。

そこで、これらの課題を解消するため、2008年に法律が制定され、税制上の優遇措置の有無に関わらず、目的に沿った活動のため手続きが容易になり、幅広い分野で一般社団法人の設立が選ばれるようになりました。

他の法人との主な違い

一般社団法人は、株式会社や合同会社と比べて、つぎのような特徴があります。

① 剰余金の分配ができない

先にも述べたように、一般社団法人は、事業活動で得た剰余金の分配をすることができません(法人法35条3項)。勘違いしやすい点ではありますが、剰余金の分配ができないだけで、事業活動で利益を得ることや従業員への給与の支払うことは禁止されていません。
事業で得た利益は、分配されずに事業活動のための資金として活用されます。

② 議決権のルール

株式会社の場合、「1株=1議決権」であるのに対し、一般社団法人は、合同会社と同様に、原則、社員は、「1人=1議決権」が基本です(法人法48条1項)。例外として、定款で別段の定めをすることができますが、決議をする事項の全部につき、社員が議決権を行使することができない旨の定款の定めは、効力がありません。(法人法48条1項、2項)。

一般社団法人のメリット・デメリット

一般社団法人を設立することには、つぎのようなメリットとデメリットがあります。

メリット

  • 費用が安く抑えられる
    設立登記をする際の登録免許税は、株式会社は最低でも15万円必要でうが、一般社団法人は6万円と低くなっています
  • 税制上の優遇が受けられる
    一定要件を満たせば、収益事業以外の事業から生じた所得については法人税がかかりません。公益認定を受けていないからといって、税制上の優遇を受けられないわけではなく、範囲が異なります

デメリット

  • 剰余金の分配が不可
    社員は、剰余金(利益)の配当を受けることはできません
  • 管理・会計が複雑
    一定の要件を満たせば税制上の優遇を受けることができます。しかし、収益事業から生ずる所得とそれ以外の事業から生ずる所得とに明確に分けて管理する必要があります。そのため、会計処理が手間となることがあります
  • 上場することができない
    一般社団法人は「人の集まり」に法人格を与えているため、株式会社のように上場することができません

一般社団法人設立の基本的な流れ

1.定款の作成と認証

一般社団法人を設立するためには、まず定款の作成と公証役場での認証が必要です。

一般社団法人は「人」の集まりに法人格を持たせたものであるため、設立には社員(株式会社でいうところの株主にあたる)が2人以上であることが必要です。この要件は、設立時に必要な要件となっているため、設立後に社員が1人になったとしても法人として存続することができます。

設立後の定款変更には、総社員の半数以上であって、総社員の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければなりません(法人法49条2項4号、法人法146条)。

2.設立時役員の選任

一般社団法人の設立時における理事や監事を定款で指定されていない場合は、定款認証後に設立時社員の議決権の過半数により選任することになります(法人法15条1項、法人法17条1項)。設立時社員は、一人につき一個の議決権があります(法人法48条2項)。

また、設立しようとする一般社団法人が理事会を設置する一般社団法人である場合には、設立時理事は、3人以上でなければなりません(法人法16条)。理事会を設置しない一般社団法人であれば、1人でもかまいません。

設立時理事の全員が代表理事となるときを除き、設立時代表理事も選ぶ必要があります。理事会を設置する一般社団法人の設立時代表理事の選定は、設立時理事の過半数をもって決定します(法人法21条)。

3.設立登記の申請

主たる事務所の所在地を管轄する法務局に設立登記を申請します。この登記手続きにより、一般社団法人が正式に成立します。

設立の登記をするときは、会社の印鑑の届出をすることも忘れずに行いましょう。

4.設立手続きにかかる費用

一般社団法人の登記申請手続きにかかる費用は、以下のとおりです。

  • 登録免許税: 6万円
  • 定款認証のための費用::約5万円
  • 専門家への報酬:司法書士に依頼すれば報酬が発生します

登録免許税は、設立登記のときに法務局に支払う費用です。
その他には、会社の印鑑の作成費用などかかります。

5.設立後に必要な手続き

一般社団法人が設立された後も、様々な手続きが必要となります。

  • 法人名義での銀行口座作成
  • 税務署への各種届出
  • 社会保険への加入手続き
  • 従業員を雇用する場合は、労災保険と雇用保険の加入手続き

まとめ

一般社団法人の設立手続きをスムーズに進めるには、事前の準備と法的知識が欠かせません。

設立登記はご自身でも可能ですが、専門家に依頼すれば効率よく、ミスのない安心な手続きが可能です。運営後のサポートまで見据え、まずは専門家の無料相談を活用してみてはいかがでしょうか。

当事務所は、全国対応で一般社団法人設立をサポートしています。ご不明な点、ご相談があればお気軽にご連絡ください。