遺産分割協議書と遺産分割協議証明書の違いは?メリット・デメリットと選び方
相続した不動産の名義変更などを進めるとき、相続人同士で話し合った内容を、書類にまとめる必要があります。
その際に使われるのが「遺産分割協議書」や「遺産分割協議証明書」です。
名前はよく似ていますが、主な違いは、相続人全員が一つの書類に署名・押印するか、一人ずつ個別の書類に署名・押印するかという点です。
相続人が遠方に住んでいる場合や、人数が多い場合には、遺産分割協議証明書を利用することで、書類のやり取りを進めやすくなることがあります。一方で、相続人全員分の書類を集めなければならない点など、注意しておきたいこともあります。
この記事では、遺産分割協議書と遺産分割協議証明書の違い、それぞれのメリット・デメリット、選び方について解説します。
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遺産分割協議書と遺産分割協議証明書の違い
遺産分割協議書と遺産分割協議証明書は、どちらも遺産分割協議の内容を証明するために利用される書類です。
大きな違いは、署名・押印の方法にあります。
| 比較項目 | 遺産分割協議書 | 遺産分割協議証明書 |
|---|---|---|
| 書類の作り方 | 協議内容を一つの書類にまとめる | 同じ協議内容を証明する書類を相続人ごとに作成する |
| 署名・押印 | 相続人全員が一つの書類に署名・押印 | 各相続人がそれぞれの書類に署名・押印 |
| 書類のやり取り | 一つの書類を順番に回す方法などがある | 各相続人に個別に送付できる |
| 向いているケース | 相続人が比較的少なく、書類を回しやすい場合 | 相続人が遠方に住んでいる場合や、個別に書類を送付したい場合 |
どちらを利用する場合も、相続人全員の合意が必要であることに変わりはありません。
遺産分割協議証明書を使えば、相続人の一部だけの合意で手続きができる、というわけではない点に注意しましょう。
遺産分割協議書とは?
遺産分割協議書は、相続人全員で合意した財産の分け方を、一つの書類にまとめたものです。
例えば、亡くなった方が不動産と預貯金を所有していた場合に、「不動産は長男が取得し、預貯金は長女が取得する」といった合意内容を記載します。
相続人全員がその内容に合意し、必要な署名・押印を行うことで、遺産分割協議の内容を証明する書類になります。
相続登記や金融機関での相続手続きなど、さまざまな場面で利用されます。
遺産分割の方法の代償分割については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 「代償分割とは?遺産分割協議書への代償金の書き方と注意点」
遺産分割協議証明書とは?
遺産分割協議証明書は、成立した遺産分割協議の内容を、相続人が個別に証明するための書類です。
例えば、相続人が5人いる場合、各相続人が署名・押印するための書類をそれぞれ作成し、個別に送付する方法が考えられます。
全員が一つの書類に署名・押印する必要がないため、遠方に住む相続人がいる場合などに利用しやすい方法です。
ただし、書類を分けても、遺産分割協議の内容は相続人全員で合意したものと一致していなければなりません。
遺産分割協議証明書のメリット
1.相続人が遠方に住んでいても書類を集めやすい
相続人が複数の地域に住んでいる場合、一つの遺産分割協議書を郵送で順番に回すと、書類が戻ってくるまでに時間がかかることがあります。
遺産分割協議証明書であれば、相続人それぞれに書類を送付し、個別に返送してもらう方法を取れます。
全員が同じ場所に集まる必要もないため、相続人の居住地が離れている場合に便利です。
2.相続人が多い場合も個別に対応できる
相続人が多い場合には、書類を回す順番や、誰のところで止まっているのかを管理するのが大変になることがあります。
個別に書類を送付する方法であれば、それぞれの相続人に対応しながら、返送状況を確認できます。
ただし、相続人ごとに書類を作成・送付するため、準備する書類の数が増える点には注意が必要です。
3.一つの書類を紛失した場合の影響を抑えやすい
一つの遺産分割協議書を相続人全員で回す場合、その書類を紛失すると、再度署名・押印を集める必要が生じることがあります。
個別の証明書であれば、各相続人の書類を別々に管理できます。
もっとも、提出先に必要な書類がすべてそろわなければ手続きは進められないため、返送された書類の管理は必要です。
遺産分割協議証明書のデメリット
1.相続人全員分の書類をそろえる必要がある
遺産分割協議証明書は、相続人がそれぞれ協議内容を証明するための書類です。
相続登記などで必要な場合は、原則として、協議内容を証明するために必要な相続人全員分の書類をそろえなければなりません。
一人でも返送が遅れたり、署名・押印に対応してもらえなかったりすると、手続きが進みません。
これは遺産分割協議書でも同じですが、遺産分割協議証明書では個別の書類の回収状況を管理する必要があります。
2.書類の作成・管理に手間がかかる
相続人ごとに書類を作成するため、相続人が多いほど準備する書類が増えます。
記載内容に誤りがあったり、相続人によって異なる内容の書類を作成してしまったりすると、修正や再作成が必要になる場合があります。
3.相続人全員の合意が必要な点は変わらない
遺産分割協議証明書を利用しても、遺産分割協議そのものが不要になるわけではありません。
相続人全員が合意していることが前提であり、合意していない内容を証明書に記載しても、合意していない相続人からの署名押印が得られないため、遺産分割協議が成立しないこととなります。
意見がまとまっていない場合は、まず遺産分割について話し合う必要があります。
遺産分割協議書と遺産分割協議証明書、どちらを選ぶ?
どちらの書類が適しているかは、相続人の人数や居住地、書類のやり取りの方法などによって異なります。
遺産分割協議書が向いているケース
- 相続人の人数が少ない
- 一つの書類を順番に回す方法で問題がない
- 協議内容を一つの書類にまとめて管理したい
遺産分割協議証明書が向いているケース
- 相続人が遠方または海外に住んでいる
- 相続人が多く、個別に書類を送付したい
- 相続人がそれぞれの都合に合わせて署名・押印できるようにしたい
遺産分割協議証明書を使う際の注意点
1.協議内容を正確に記載する
遺産分割協議証明書には、成立した遺産分割協議の内容を正確に記載する必要があります。
不動産については、所在地や地番、家屋番号などを確認し、対象となる不動産を特定できるようにします。
また、誰がどの財産を取得するのかについても、協議内容と一致していることを確認しましょう。
2.相続人の一人が協議後に亡くなった場合は、通常のケースと分けて考える
遺産分割協議が成立した後、相続人の一人が亡くなることがあります。
この場合、すでに成立していた協議の内容を証明する必要が生じることがあります。
平成28年3月2日付法務省民二第154号通知では、遺産分割協議後に他の相続人が亡くなり、協議の証明者が一人となった場合の相続登記の取扱いが示されています。
相続不動産の遺産分割の協議をした旨を記載した1通の遺産分割協議証明書を添付することで、相続登記ができることとされています。
ただし、これは、遺産分割協議が成立していなかった場合に、残った相続人一人だけで自由に分割内容を決められるという意味ではありません。協議がいつ成立したのか、誰が参加していたのかなど、個別の事情を確認する必要があります。
相続人が一人のときの遺産分割協議書については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 「相続人が一人のときの遺産分割協議書|数次相続の場合の不動産登記と注意点」
数次相続のときの中間省略登記と遺産分割協議書については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 「数次相続登記は一括申請できる?中間省略登記の要件と注意点」
まとめ|相続人の状況に合わせて書類を選びましょう
遺産分割協議書と遺産分割協議証明書は、どちらも遺産分割協議の内容を証明するために利用される書類です。
主な違いは、相続人全員が一つの書類に署名・押印するか、相続人ごとに個別の書類を作成するかという点です。
相続人が遠方に住んでいる場合や人数が多い場合には、遺産分割協議証明書を利用すると書類のやり取りを進めやすくなることがあります。
一方で、必要な書類をすべて集める必要がある点や、作成・管理に手間がかかる点には注意が必要です。
どちらを選ぶか迷ったときは、相続人の状況と、相続登記など実際に行う手続きを踏まえて検討しましょう。
相続登記や必要書類の整理については、相続登記・相続手続きのご案内をご覧ください。


