供託による休眠担保権の抹消
休眠担保権とは、明確に定義づけされているものではありませんが、一般的に、昔に設定した担保権で現在も不動産の登記簿に存在している担保権(抵当権)のことをいいます。
長期間放置された休眠担保権は、不動産の売買や新たな担保権の設定の際に問題となることがあります。
この記事では、休眠担保権についてと供託を利用した休眠担保権の抹消について解説します。
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休眠担保権とは?放置のリスクと抹消の必要性
休眠担保権の発生原因
一般的に、不動産に抵当権の設定をしたらその抵当権設定登記申請をします。債権が消滅すると不動産に設定されていた抵当権などの担保権も消滅しますが、抹消の登記申請をしない限り不動産に設定されていた抵当権設定の登記は残ったままとなります。
抹消登記は、新たに権利が発生するものではありませんので、ついつい先延ばしにされることがあります。
抹消登記が長年放置され、相続が発生したことによる抵当権の存在の不知や債権者の行方が不明になる等の理由から抹消登記ができず現在まで残ってしまったことが休眠担保権が発生してしまっている原因と考えられます。
放置するリスク
休眠担保権が残ったままでは、通常、不動産の売却や新たな担保権の設定ができません。
また、相続が発生した場合、さらに手続きが複雑になり費用もかかります。
供託による休眠担保権抹消登記申請手続き
抹消手続きの方法
抵当権の抹消登記申請は、原則として、登記権利者(不動産の所有者)と登記義務者(抵当権者)が共同して登記申請手続きをしなければなりません。
しかし、休眠担保権はこの原則による手続きができないことが多いものです。
共同申請ができない場合は、次のいずれかの方法により登記権利者が単独で抹消登記申請をすることができます。
① 登記義務者が判明しているが協力しない場合には、抵当権の抹消登記申請手続きを命ずる確定判決に基づく方法
② 登記義務者の所在が知れない場合において、非訟事件手続法による公示および除権決定による方法
③ 登記義務者の所在が知れない場合において、債権証書と弁済証書の提供による方法
④ 登記義務者の所在が知れない場合において、被担保債権の弁済期が20年経過しているときは、弁済供託による方法
⑤ 登記義務者が解散した法人で、その法人の清算人の所在が判明せず、かつ弁済期から30年および解散から30年が経過している場合
所在が知れないとは、自然人の場合は、その所在およびその死亡の有無も不明なときとされています。
法人の場合は、登記簿が存在していた場合は所在不明とはなりません。登記簿が存在し、清算人が選任され清算結了している場合で、清算人の行方が不明なときは、裁判所に清算人選任の申立てをし、共同申請により手続きをすることになります。
弁済供託とは?
供託とは、金銭、有価証券などを国家機関である供託所に提出して、その管理を委ね、最終的には供託所がその財産をある人に取得させることによって、一定の法律上の目的を達成しようとするために設けられている制度です。
出典:法務省ウェブサイト (法務省:供託手続)
弁済供託とは、債務の履行ができないときに、金銭を供託所に提供して、法的にその債務が消滅したことと同様の効果を発生させることです。
供託による抹消登記申請手続き
供託による抵当権抹消登記申請をするときは、申請書に、以下の書類を添付しなければなりません。
1 登記義務者の所在がしれないことを証する書面
2 被担保債権の弁済期から20年を経過していることを証する書面
3 被担保債権の弁済期から20年を経過した後に、債権、利息、損害金の全額を供託したことを証する書面
具体的な添付すべき書類は、事案により実に様々です。少しでも不明なときは法務局に確認しましょう。
まとめ
休眠担保権の抹消手続きは、書類の準備や計算など、専門的な知識が必要です。
特に、供託金額の計算や法務局とのやり取りは難しいこともあるでしょう。
休眠担保権の問題は、放置すればするほど解決が複雑で困難になる可能性があります。
疑問や不安がある場合は、ぜひ専門家にご相談ください。
当事務所は、休眠担保権の抹消登記についてのご相談もお受けしています。お気軽ご相談ください。