遺産分割における代償分割‐協議書作成のポイントと注意点

遺産分割の方法の一つである代償分割。
代償分割は、遺産分割の選択肢の一つですが、相続財産の評価、相続人間の合意形成、税務上の影響など、様々な要素を考慮しなければならないため、慎重に進める必要があります。

この記事では、代償分割の概要から注意点までを分かりやすく解説します。
スムーズな相続手続きのために、ぜひ参考にしてください。

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代償分割とは?他の分割方法との違い

代償分割の基本とその仕組み

代償分割とは、特定の相続人が法定相続分を超える特定の遺産を取得する代わりに、他の相続人に対してその不足分として金銭(代償金)を支払う方法です。
これにより、例えば、自宅を相続したい相続人が、他の相続人に相当額の現金を支払うことで、相続人間で公平な遺産分割が実現できます。

代償分割は、遺産分割協議において、各相続人の希望を最大限に尊重しつつ、法定相続分の取得を進めるための有効な手段となります。
この方法は、相続人同士の合意が前提となりますが、合意形成のためには、遺産の正確な評価と、各相続人の具体的なニーズを把握することが重要です。
代償金の額は、相続税評価額や固定資産税評価額などを基準に相続人間で一致した評価額に基づいて決定しましょう。

他の遺産分割方法との比較

遺産分割には、代償分割以外にもいくつかの方法があります。それぞれの特徴を理解したうえで、状況に合わせた選択が求められます。

代償分割以外にも、現物分割(遺産をそのまま分ける)、換価分割(遺産を売却して現金化して分ける)、共有分割(遺産を共有名義にする)などの方法があります。

現物分割は、遺産をそのままの形(現物)でそれぞれの相続人に分配する方法です。手続きが比較的シンプルな一方、不動産など価値の異なる財産が複数あると調整が難しくなりがちです。また、同じ財産を希望する相続人が複数いる場合も合意形成が難航します。

換価分割は、遺産を売却して現金化し、その現金を分け合う方法です。現金で公平に分割できる点がメリットですが、売却の手間や相場変動のリスクがあります。

共有分割は、遺産を複数の相続人で共有名義にする方法です。遺産分割が難しい場合、ひとまず共有にするケースもありますが、後々の管理や処分について全相続人の同意が必要となり、トラブルのもととなることもあります。

各遺産分割方法にはそれぞれ長所と短所があります。相続人間で十分に話し合い、各自の希望や状況に合わせて最も適した方法を選択することが円満な相続手続きのポイントです。

代償分割を選ぶメリットとデメリット

代償分割のメリット|柔軟性と公平性

代償分割の大きな利点は、相続人それぞれの事情や希望に合わせて柔軟な遺産分割ができる点にあります。

例えば、「特定の不動産をどうしても相続したい」という相続人がいる場合、その人が不動産を取得し、他の相続人には公平に現金(代償金)を支払うことで合意が得やすくなります。
家業の承継や、実家を守りたいなどのケースでは、代償分割は特に有効な選択肢となります。

代償分割のデメリットや注意点|資金負担と税金リスク

一方で、代償分割には注意点やデメリットもあります。

代償分割を行う上で最も大きなデメリットは、代償金を支払う相続人に経済的な負担がかかることです。特に、不動産の評価額が高い場合や、相続人の数が多い場合には、代償金を支払う側の相続人には高額な現金が必要になるため、資金調達の負担が重くなる場合があります。

また、代償金の金額は相続人全員が納得する必要がありますが、評価方法(相続税評価額や実勢価格など)を巡って意見が対立することも少なくありません。感情面の対立がトラブルの火種になる場合もあります。

さらに、遺産分割協議書に代償分割である旨を明記しない場合、金銭の受領が贈与とみなされ、贈与税の課税リスクが発生する可能性があります。必ず記載方法や税務上の影響を事前に確認しましょう。

遺産分割協議書の作成時のポイント

遺産分割協議書には、「〇〇は、△△に対し、〇〇(不動産)を取得する代償として、〇〇円を令和〇年〇月〇日までに、△△の指定する銀行口座に振込み送金の方法により支払う。」といった、支払期日、方法を含めた具体的内容を必ず明記しましょう。
これにより、実際の支払いトラブルや誤解を未然に防ぐことができます。

トラブル回避の重要ポイント

代償金の金額には法的な定めはありませんが、相続税評価額や固定資産税評価額など公正な基準を参考に全員が納得できる水準を設定することが大切です。
専門家と相談しながら、相続人同士でしっかり協議を行いましょう。

まとめ

代償分割は有効な遺産分割方法ですが、相続財産の評価、相続人全員の同意形成、税務上のリスクなど、細やかな配慮が不可欠です。
不明点や不安がある場合は、司法書士・弁護士・税理士など専門家に相談し、円満でトラブルのない遺産分割を目指しましょう。

代償分割や遺産分割協議書作成について詳しく知りたい方やご相談をご希望の方は、お気軽に当事務所までご連絡ください。