相続手続きの期限とは?期限内にやるべきことを解説

相続手続きは、一生涯の間に何回もあることではないため慣れないものです。しかし、相続手続きには様々な期限があります。それぞれの手続きを期限にを詳しく解説します。相続手続きをスムーズに進めましょう。

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まず最初にする手続き

死亡診断書の受取と死亡届の提出

死亡診断書(または死体検案書)は、故人が亡くなった原因や日時を医師が証明した書類で、通常、故人が亡くなった病院や診療所である医療機関から発行されます。
相続手続きを進める上で、重要でかつ最初の書類です。

死亡届は、死亡診断書(または死体検案書)と1枚ものになっています。
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡したときは、その事実を知った日から3か月以内)に提出しなければいけません(戸籍法86条)。
届出先は、死亡者の死亡地か本籍地又は届出人の所在地の市区町村です。
死亡届を提出することで、故人の戸籍が除籍され、相続手続きを進めることができます。

火葬許可証

亡くなった方のご遺体を火葬するためには、火葬許可証が必要になります。許可証は、市役所や町村役場で発行されます。
火葬や埋葬するには必ず許可証が必要になるため、必ず取得しておく必要があります。
火葬許可証の発行については、死亡届を提出した際に発行される自治体又は別に申請書の提出が必要な自治体があります。

この火葬許可証(埋葬許可証)は、後に納骨する際にも必要になるため、大切に保管しましょう。

世帯主の変更届

また、世帯主が亡くなられた場合は、世帯主が変更になるため、世帯主が亡くなった日から14日以内に市町村長に届け出なければなりません(住民基本台帳法25条)。
ただし、夫婦2人暮らしでの場合など、亡くなった世帯主以外の世帯員が1人しかいないときは、変更届が不要な自治体もあります。

公的年金と(国民)健康保険の手続き

公的年金

年金受給者が亡くなられた場合は、14日以内に年金受給権者死亡届の提出が必要です。ただし、日本年金機構に個人番号(マイナンバー)を登録している方は、原則として、省略できる取り扱いとなっています。

また、年金を受けている方が亡くなったときにまだ受け取っていない年金または亡くなった日より後に振込みされた年金のうち、亡くなった月分までの年金、いわゆる未支給年金はその方と生計を同じくしていた遺族が受け取ることができます。
年金は2ヵ月毎の後払いなので、必ず未支給年金が発生することになります。
未支給年金は、受け取った方の所得税の対象となる一時所得に該当します。

提出先は、年金事務所または街角の年金相談センターです。

一定の要件に該当する場合には、亡くなられた遺族に対して遺族年金等が受けられることがありますので確認をしておくといいでしょう。

(国民)健康保険、後期高齢者医療保険

会社の健康保険に加入していない者(国民健康保険加入者又は後期高齢者医療保険の加入者)が亡くなられた場合は、市区町村に資格喪失届を提出しなければなりません。
会社の健康保険に加入していた者は、事業主に手続きをしてもらいましょう。

被保険者の葬祭を行った者は葬祭費(会社の健康保険に加入していた者は埋葬料)が支給されますので、葬儀を行った日の翌日から2年以内に申請します。
葬祭費(埋葬費)の支給額は支給する機関によって変わりますので確認が必要です。

相続放棄と限定承認の申出

相続放棄や限定承認をする場合は、原則、自己のために相続の開始を知った日から3ヶ月以内にしないといけません。
相続放棄や限定承認の申述は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所にします。

相続(単純承認)とは、相続によって財産だけでなく、負債も無限に引き継ぐことをいいます(民法920条)。

相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされるため(民法939条)、負債の方が相続財産を上回る場合、相続放棄をすることで、相続財産を受け取らないのと同時に負債の支払いを免れることができます。

限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈をすることができる制度です。
この限定承認は、相続人全員が共同して行う必要があります(民法923条)。
また、限定承認をした後5日以内に、すべての相続債権者及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を官報に公告及び各別にその申出の催告をしなければなりません(民法927条)。

相続放棄についてはこちら

準確定申告と相続税の手続き

準確定申告

被相続人が生前に受け取った収入について、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に準確定申告を行う必要があります。
準確定申告は、被相続人が亡くなった後、被相続人の収入についての所得税を支払うための申告です。
準確定申告は、相続人が被相続人の死亡当時の納税地の税務署長に提出して行います。
相続人が2人以上いる場合は、原則、連署により提出します。

相続税の申告・納付

相続税は、相続によって取得した財産について相続人に対して課せられる税金です。

被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告と納付をしなければなりません。期限を過ぎて税金を納めると延滞税が発生する場合があります。
相続税の申告は、被相続人の住所地を所轄する税務署に提出します。

相続登記その他の手続き

遺留分侵害額請求をする場合

兄弟姉妹以外の法定相続人で遺留分が侵害されている遺留分権利者は、知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅することとなっています。また、相続開始の時から10年を経過したときも、時効によって消滅します(民法1048条)。

遺留分とは、法律で定められた相続人の最低限の相続分です。遺言によって遺留分が侵害されている場合、遺留分侵害額請求を行うことで、他の相続人へ金銭請求をすることができます。

相続登記の手続き

相続登記とは、不動産の所有者の名義を被相続人から相続人に変更する手続きです。

遺言又は相続人間の遺産分割協議により決めた者が、新たに不動産の所有者となります。

相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局で行います。
相続財産を売却するときは、前提として相続登記をしないと、不動産の売却ができません。

なお、早期に相続人間で話し合いがまとまらないときの場合に、相続人申告登記という新たな登記制度が設けられています。

相続登記の放置が引き起こすリスクについてはこちら

死亡保険金の請求と預貯金の解約

死亡保険金は、被保険者が亡くなった際に契約内容に従って保険会社から支払われるお金です。死亡保険金の請求は、保険会社に提出します。

遺言又は相続人間の遺産分割協議により決めた内容に応じて、亡くなられた方の預貯金や有価証券の解約手続きを行います。

死亡保険金の受取人が先に死亡している場合についてはこちら

相続手続きを期限内に終わらせるためのポイント

遺言書の有無を確認する

遺言書の有無で手続きの内容が変わりますので、相続開始後、速やかに確認することが重要です。

自筆証書遺言は、被相続人の家や貸金庫などを探します。自筆証書遺言を発見した相続人又は遺言書の保管者は、家庭裁判所に遺言書の検認の申立てをする必要があります。
ただし、新たに、法務局で自筆証書遺言を保管するサービスが開始されているので、法務局に照会して確認する必要もあるでしょう。
法務局で保管されている自筆証書遺言については、家庭裁判所の検認の必要はありません。

公正証書遺言を被相続人が作成していた場合は、公証役場で検索が可能なので、最寄りの公証役場で確認しましょう。
なお、公正証書遺言も遺言書の検認手続きは不要です。

相続人の調査と相続財産の調査

相続財産を、法定相続人のうち誰が何を相続するのか話し合う必要があります。
場合によっては、相続放棄を検討することもあるかもしれません。
そのためには、まずは法定相続人の調査と、相続財産と債務の特定をしないといけません。

相続人の調査は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本全てを取得し、調査していくことになります。
不動産や預貯金口座が多い場合は、法定相相続証明情報の制度(被相続人の相続関係を一覧にし、その一覧図を発行する制度)を利用すると手続きがスムーズになるので検討してもいいかもしれません。
被相続人が本籍地を何度も転籍している、代襲相続や数次相続が発生していて相続人がたくさんいるときなど、個人で取得するのが大変な場合は司法書士などの専門家に依頼することも一つの方法です。

遺産分割協議

法定相続人全員で相続財産をどのように分けるか遺産分割協議を行い、その内容を遺産分割協議書にまとめます。
まとまった遺産分割協議に沿って被相続人の相続財産をそれぞれ取得する相続人に分ける手続きと相続税の申告を行います

どうしても遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てる方法もあります。

専門家に相談する

相続手続きは煩雑で期限も厳守が求められます。不安がある場合は専門家に相談するのも一つの選択肢です。
相続手続きは、たくさんの知識が必要となるため、専門家のサポートを受けることで、スムーズに手続きを進めることができます。

タイムラインを作成する

各種手続きの期限を洗い出し、スケジュール通りに進行するためのタイムラインを作成します。
タイムラインを作成することで、各手続きの期限を把握し、スケジュール通りに手続きを進めることができます。
タイムラインには、期限だけでなく、必要な書類や手続きに必要な期間なども記載しておくと便利です。

まとめ

相続手続きにはたくさんの期限があります。
期限を把握していないと、様々な不利益が生じる可能性があります。
亡くなられた方の意思を尊重し、遺族が安心して生活できるよう、相続手続きの期限を把握、適切な時期に手続きを進めましょう。