遺産分割における代償分割‐協議書作成のポイントと注意点
司法書士･社会保険労務士 石井 もも遺産分割の方法の一つである代償分割。
代償分割は、遺産分割の選択肢の一つですが、相続財産の評価、相続人間の合意形成、税務上の影響など、様々な要素を考慮しなければならないため、慎重に進める必要があります。
この記事では、代償分割の概要から注意点までを分かりやすく解説します。
スムーズな相続手続きのために、ぜひ参考にしてください。
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目次
代償分割とは？他の分割方法との違い
代償分割の定義と仕組み
代償分割は、特定の相続人が法定相続分を超える特定の遺産を取得する代わりに、他の相続人に対してその不足分として金銭（代償金）を支払う方法です。
これにより、例えば、自宅を相続したい相続人が、他の相続人に相当額の現金を支払うことで、相続人間で公平な遺産分割が実現できます。
代償分割は、遺産分割協議において、各相続人の希望を最大限に尊重しつつ、法定相続分の取得を進めるための有効な手段となります。
この方法は、相続人同士の合意が前提となりますが、合意形成のためには、遺産の正確な評価と、各相続人の具体的なニーズを把握することが重要です。
代償金の額は、相続税評価額や固定資産税評価額などを基準に相続人間で一致した評価額に基づいて決定しましょう。
現物分割、換価分割、共有分割との比較
代償分割以外にも、現物分割（遺産をそのまま分ける）、換価分割（遺産を売却して現金化して分ける）、共有分割（遺産を共有名義にする）などの方法があります。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、状況に合わせて最適な方法を選択しましょう。
現物分割は、各相続人が個別の遺産を直接相続する方法であり、手続きが比較的簡単であるというメリットがあります。しかし、遺産が不動産の場合、評価額が均等にならないことや、特定の遺産を希望する相続人が複数いるときには、調整が難しくなることがあります。
換価分割は、遺産を現金化して分割するため、公平な分割がしやすいというメリットがあります。
共有分割は、遺産を複数の相続人で共有する方法であり、遺産の処分や管理について、相続人の合意が必要となるため、意見の対立が生じやすいというデメリットがあります。
それぞれの分割方法の特性を理解し、相続人間で十分に話し合い、最適な方法を選択しましょう。
代償分割を選ぶメリット・デメリット
代償分割のメリット：公平性と柔軟性
代償分割の最大のメリットは、各相続人の個別の事情やニーズに合わせた柔軟な遺産分割が可能になる点です。
例えば、長男が実家を相続したい意向が強く、他の相続人がそれを理解している場合、長男が実家を相続する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払うことで、遺産分割協議を円滑に進めることができます。
この方法は、特定の遺産に対する思い入れが強い相続人がいる場合や、事業承継などで特定の相続人が特定の遺産を必要とする場合に特に有効です。
代償分割のデメリットと注意点：資金調達と税金
代償金を支払う相続人に経済的な負担がかかる点、代償金の額で揉める可能性がある点、遺産分割協議書の中で明記する必要がある点に注意が必要です。
代償分割を行う上で最も大きなデメリットは、代償金を支払う相続人に経済的な負担がかかることです。
特に、不動産の評価額が高い場合や、相続人の数が多い場合には、代償金の額が大きくなる可能性があります。
また、代償金の額は、相続人全員が納得できる金額でなければなりません。
評価方法や金額について意見の相違がある場合には、相続人間で感情的な対立が生じる可能性もあります。
さらに、遺産分割協議書の中で代償分割である旨を記載しないと、代償金の支払いが、贈与税の対象として課される場合があるため、税務上の影響についても事前に確認しておく必要があります。
遺産分割協議書の書く際の注意点
「〇〇は、△△に対し、〇〇（不動産）を取得する代償として、〇〇円を令和〇年〇月〇日までに、△△の指定する銀行口座に振込み送金の方法により支払う。」といった具体的な記載が必要です。
このとき、支払期日や方法も明記しましょう。これらの情報を明確に記載することで、後々のトラブルを避けることができます。
トラブル回避のポイント
代償金額の算定方法に法的な決まりはありませんが、相続税評価額、固定資産税評価額、などを参考に、相続人全員が納得できる金額を設定しましょう。
相続人全員が納得できる金額を設定することが、トラブルを回避することになります。
まとめ
代償分割は、遺産分割の選択肢の一つとして非常に有効ですが、相続財産の評価、相続人間の合意形成、税務上の影響など、様々な要素を考慮しなければならないため、慎重に進める必要があります。
税務上の問題については、弁護士や税理士に相談することをおすすめします。
代償分割を賢く活用し、相続人全員が幸せになれる遺産分割を目指しましょう。
代償分割についてもっと詳しく知りたい方や、相談したいなどございましたら、お気軽にご連絡ください。
