株主総会議事録の記載事項を解説!備え置き義務まで

株式会社は、株主総会を開催したときは、株主総会議事録を作成しなければなりません。株主総会議事録の作成とその備え置きは、法令で明確に規定されています。
本記事では、株主総会議事録の記載事項、備え置き、保存義務についてわかりやすく解説します。

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株主総会議事録とは?その役割

株主総会の役割と議事録の必要性

株主総会は、株式会社における意思決定機関であり、会社の組織運営に関する重要な事項を決定します。具体的には、取締役の選任・解任、定款の変更、剰余金の配当などが挙げられます。株主総会議事録は、株主総会での決定内容を記録したものであり、会社法によって作成と保管が義務付けられています。

株主総会議事録は、株主、債権者、裁判所などの利害関係者から閲覧を求められる場合もあり、その内容が会社の信用や評価に影響を与えることもあります。

株主総会議事録には、決議事項だけでなく、日時、場所など、 詳細な情報が記載しなければなりません。
また、株主総会議事録は、訴訟や税務調査などの際に、証拠書類となることがあります。

株主総会議事録の具体的な記載事項

株主総会議事録に記載しなければならに事項は、会社法施行規則72条で定められています。

主なものとしては、以下の事項になります。

  1. 株主総会が開催された日時及び場所
  2. 株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人の氏名又は名称
  3. 議長が存するときは、議長の氏名
  4. 株主総会の議事の経過の要領及びその結果
  5. 一定の事項について株主総会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要
  6. 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名


1.は株主総会が開催された日時が記載事項となっているので、時間まで記載しなければなりません。一般的には、開催の時間だけでなく、閉会の時間も記載します。

また、最近では、オンライン面談も頻繁に行われることが多くなりました。そこで、株主総会もオンラインで開催できるのかどうかという問題があります。オンラインでの株主総会は、2つに大別することができます。

一つは、株主総会の場所を定めずに全員がオンラインで株主総会に出席するという方法です(以下、「バーチャルオンリー型」と言います)。
もう一方は、株主総会の場所を決め、そこで実際に総会を開催し、その場所にいない株主もオンラインで株主総会に出席できるようにするという方法です(以下、「ハイブリッド型」と言います。)。

バーチャルオンリー型は、経済産業大臣及び法務大臣の「確認」を受けた上場会社に限り、定款を変更して開催することができます。それに対して、ハイブリッド型であれば、上場会社でなくても開催することができます。
バーチャルオンリー型にしてもハイブリッド型にしても、その旨を株主総会議事録に記載することになります。

5.の一定の事項についても、会社法施行規則72条3項3号で定められています。
主なものとしては、①取締役の株主総会に提出する会計に関する議案や書類等を監査役が調査し、その調査の結果を株主総会に報告した内容や②監査役や会計参与が自己の報酬等についての意見を述べたときの内容などになります。

法令で定められている事項以外に、一般的に、議決権を有する総数や出席した議決権数などを記載します。
これは株主総会の決議事項については、法定の決議要件を満たす必要があるので、その決議要件を満たしていることを明らかにするために記載します。
その他には、当然といえますが、株主総会の議案が決議要件を満たされたか否か、有効に決議されたか否かを記載します。

押印の必要性

会社法では、株主総会議事録に押印は義務付けられていません。
ただし、会社によっては、定款で押印や署名を要する規定を定めているときがあります。
そのため、定款を確認し、必要に応じて記名押印又は署名をするようにしましょう。

また、会社法では押印を求められなかったとしても、取締役や代表取締役を選任するなど、その株主総会議事録を登記申請に添付するときは、商業登記に関する法令で押印が義務付けられていることがあります。

登記申請に使用する株主総会議事録への押印の可否と判子の種類については確認が必要です。

役員変更の登記方法と注意点(取締役と監査役の場合)についてはコチラ
役員変更の登記方法と注意点(代表取締役の場合)についてはコチラ

株主総会議事録の備え置き期間と罰則

備え置き期間とその理由

会社法では、株主総会議事録の備え置き場所及び備え置き期間について定められています。原則として、株主総会議事録は、株主総会の日から10年間、 会社の本店に備え置く義務があります(会法第318条2項)。支店がある場合には、その議事録の写しを支店にも5年間備え置かなければなりません(会法第318条3項)。

株主及び債権者は、営業時間内は、いつでも、株主総会議事録の閲覧又は謄写の請求をすることができることとされています(会法第318条4項)。また、親会社の株主も、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、株主総会議事録について閲覧又は謄写の請求をすることができます(会法第318条5項)。
このように利害関係人からの閲覧等の請求にこたえるため、備え置き期間が定められています。

会社法上は、株主総会議事録の保存期間については定められていません。しかし、上記のように備え置き期間が明確に定められているため、株主総会議事録の保管期間は最低でも10年となります。

なお、計算書類等については、保存期間と備え置き期間と両方とも規定されています。
計算書類を作成した時から10年間、その計算書類及びその附属明細書を保存しなければならないとされているため、最低でも10年が保存期間となります(会法第435条4項)。

罰則について

罰則規定については、知らない方も多いかもしれません。
株主総会議事録に記載すべき事項を記載しなかったとき、正当な理由なく株主総会議事録の閲覧又は謄写の交付を拒んだときは、100万円以下の過料に科されることとなっています(会法第976条)。
法令違反にならないように気を付けましょう。

まとめ

株主総会議事録は、会社の重要な意思決定を記録するものであり、会社法によって作成と備え置きが義務付けられています。株主総会議事録は、株主総会が適法に開催され、適切な手続きを経て決議が行われたことを証明する重要な証拠にもなります。インターネットで入手できるテンプレートを活用することも有効ですが、会社の状況に合わせてカスタマイズしましょう。

当事務所は、株主総会議事録の作成支援も行っております。ご不明点等ございましたら、お気軽にご連絡ください。